飛行機雲はエンジンの排気ガスに含まれる水分でできる場合があるとお話ししました。それでは,身の回りに同じような排気ガスでできる雲がないか見ていきましょう。これを考えると,飛行機雲への理解も深まると思います。
煙突から出る雲
一番最初に出した写真は2本の煙突から出た排気ガスが冷やされて雲ができている様子を示しています。この煙突は石炭火力発電所のものです。石炭は炭素Cや水素Hなどから構成されるため,燃やせば二酸化炭素CO2や水H2Oが出てきます。ですので,煙突からは水が気体の状態で排出されています。飛行機雲と同じように,排気ガスが煙突を出てから周りの空気で冷やされて水が凝縮しはじめる過程があるので,雲の出始めるところは煙突から離れたところとなっています。
下の写真に示す飛行機雲と煙突から出る雲と比較してなにか気が付くことはありませんか? 飛行機雲は飛行機の後ろにまっすぐにできているけど,煙突の煙は横の方に流れて行ってますよね。飛行時の飛ぶ速さは約900km/h(250m/s)で,吹いている風の速さに対して十分速いので,飛行機雲は飛行機の飛んでいる航路に沿ってできているように見えます。できた後の飛行機雲は風に流されていきますが。これに対し,煙突からの雲は上昇速度と横から吹く風の速度が同じオーダーなので横風に流されている様子が観察されます。
下の写真は煙突から出た排気ガスから雲ができている様子を示しています。風は写真の左から右の方向に吹いており,煙突から出た排気ガスが冷やされ雲ができて,その雲が風に流されていることがわかります。煙突の高さより少し上に逆転層(排気ガスを上に行かせないようにする,ふたみたいな空気の層)があって,排気ガスからできた雲上に登っていかず,地上付近にとどまっています。
航跡雲・船の排気ガスによってできる雲
飛行機雲によってできる雲があれば,船によってできる雲もあります。「航跡雲」で検索いただくと詳しい記事が出てきます。飛行機雲とちがい,こちらは船の排気ガス中に含まれる微粒子が影響しています。風が弱く霧が出るような湿った空気があるとき,排気ガスの微粒子が水の凝縮核となって水滴ができ,これが雲になります。風が弱いので,できた雲が広がりにくく,船が通った後に飛行機雲のような線状の雲ができます。
排気ガスからできる雲に着目して考えてみました。飛行機雲の理解が深まればうれしいです。