いろいろな飛行機雲

あれこれ

これまで飛行機雲彩雲や,エンジンの数によって飛行機雲の本数が異なるなど,飛行機雲のお話をしてきました。ここでは,別の見方でいろいろな飛行機雲のお話をします。これを知っていただけると,飛行機雲の奥深さを感じていただけると思います。

翼端渦の影響が大きく出ているもの

飛行機雲の振る舞いの中で一番面白いと思うのは,Crowの不安定性によるものだと思います。日本ではあまり知られていないようですが,例えば以下の文献に翼端渦が2本発生し,それらが相互作用する記述があります。
 https://jaxa.repo.nii.ac.jp/record/2938/files/AA1830029009.pdf
 https://en.wikipedia.org/wiki/Crow_instability
翼端渦が飛行機雲として可視化されると,例えば下の写真のようなものが見えます。細い2本の渦管があり,それらが相互作用して周期的に近づいてウインナーソーセージが並んだような形になります。なお,この記事の一番最初に示した写真もCrowの不安定性によるものです。渦管の形は時々刻々変化し,とぎれとぎれになったりします。なかなかお目にかかる機会がないのですが,どういう条件がそろうと見ることができるのか知りたいものです。

飛行機雲で,Crowの不安定性をあらわす

つぎの写真はCrowの不安定性がきれいに可視化されているわけではありません。しかし,2本の渦管が相互作用した結果,飛行機雲にコブを作ったところが見えたものです。この辺の理論については私もあまり理解できていませんので,今後勉強していきたいこところです。

飛行機雲でこぶができたもの

消滅飛行機雲

消滅飛行機雲というのも結構有名です。飛行機が雲の中を突っ切ると,そこだけ雲がなくなって,線状に雲のないところができるというものです。なお,下の写真は消滅飛行機雲ができてしばらく時間がたっており,飛行機が通った後が雲で埋まってきている状態を示しています。雲の消える原因は主に以下のふたつがあるといわれています。

  • 飛行機の後方乱気流により,雲粒を含んだ空気が周囲の乾いた空気と混ざるため雲粒が蒸発する
  • エンジンの高温の排気によって雲粒が蒸発して消える

雲の中を飛行機が通過するということは,相対湿度ほぼ100%の中をエンジンが通過してエンジンから排気の中に水分が供給されるということです。このことを考えると,高温の排気で雲粒が一旦消えても,また飛行機雲ができて,通った空間は飛行機雲で埋まるような気がします。エンジンの排気の影響はどの程度あるのか検討された結果などがあれば教えていただけると嬉しいです。個人的には,乱気流で空気が混ざる影響が主のように思いますが・・・。

消滅飛行機雲

点線飛行機雲

空を見上げると,雲があるが場所とない場所が見えます。これと同じように,上空の空気には乾いた場所と湿った場所があります。そのため,飛行機雲の残り方が場所によって異なり,下の写真に示すように点線状の飛行機雲ができることがあります。雲が消えたところは残っている場所に比べ,乾いている(湿度が低い)と考えられます。

点線飛行機雲

飛行機雲の色

飛行機雲の色も謎が多いです。それを感じたのは下の写真です。縦方向に飛ぶ飛行機と,横方向に飛ぶ飛行機の航跡が十字にクロスしています。交わり方から,横方向に飛ぶ飛行機の方が高い高度を飛んでいるようです。また,縦方向の飛行機雲は上空の薄い雲に影を落としています。
ふたつの飛行機雲の色はどうですか? 縦方向のは青っぽく,横方向のは赤っぽくありませんか?
この違いはどこからくるのでしょうか? 謎です。

2本の飛行機雲が交差し,それぞれの色が違う

下の写真は2024年1月1日 6時53分,元旦に撮影したものです。朝焼けの中でオレンジ色に光る飛行機雲です。この日の地上での日の出時刻は6時58分でした。飛行機は高いところを飛んでいるので,地上より早く初日の出を迎えたようです。初日の出を飛行機から見られるなんてうらやましいです。

朝焼けの中の飛行機雲

つぎは,「雲の色はどうして白とか灰色があるの?」という質問に答えられる写真です。2022年8月16日 17:10の写真です。上空高いところ全体が雲で覆われています。その雲の下を飛行機が飛び,とぎれとぎれですが飛行機雲ができました。太陽に近い飛行機雲は灰色に見えますが,太陽から遠いところの飛行機雲は白っぽく見えます。画像解析ソフト「ImageJ」で各飛行機雲の輝度(輝度が大きいほど明るい)を測定すると,太陽から遠い飛行機雲は白っぽく見えるのに輝度は小さいことがわかりました。

色の違いがわかる飛行機雲

人間の目は見ているものの背景の影響も受けます。下の絵の雲の形のところは同じ濃さの灰色なのですが,背景の灰色が濃いと白っぽく見えます。上の写真も同じことで,太陽から遠いところの飛行機雲の背景の雲の色が暗めの色なので,飛行機雲自体は輝度が低いにも関わらず白っぽく見えるということです。

飛行機雲の影

飛行機雲の影はときとして,天に向かうはしごのような形になります。飛行機雲から伸びる影が地上まで届いており,影と飛行機雲が一体となっています。それを登っていけば,宇宙にでも行けそうな気がしてきます。

飛行機雲の影

いろいろな出方と消え方

下のふたつの写真について,エンジンからの飛行機雲の広がり方を比較してみてください。上はスリムで広がりがあまりないのに,下側のモノは広がりが大きいです。この差は,何によってできるのでしょうか? これも謎です。

双発の飛行機雲
双発の飛行機雲

下の二枚は飛行機雲の消え方の違いに着目してください。エンジンの排気ガスで飛行機雲ができるとこは同じように見えます。しかし,消え方に着目すると,上側は2本の飛行機雲が2本のまま消えていくのに対し,下側は2本が1本になって消えていきます。この原因は? 謎です。

飛行機雲の消え方
飛行機雲の消え方

飛行機雲それぞれについてみると,わからないことがたくさんあると感じたのではないでしょうか? 知っている方が見えたらご教授いただく機会があるといいと思います。

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