超音速飛行機用エンジンのしくみ

あれこれ

昔,コンコルドという超音速旅客機がありました。超音速というのは音の速さより速く飛ぶことができるという意味です。超音速を実現するためには,いろいろ難しい課題がありますが,ここでは特にエンジンの排気口(排気ノズル)に着目して説明します。私も仕事において気液二相流を超音速で扱うまでは知らないことでした。音速を超えない世界で生きているものからするととても不思議なことなので,是非知っていただきたいと思います。

空気を超音速に加速するには・・・

ホースから空気が出ているとき,空気の勢いを強くする(流速を速くする)にはどうすればよいでしょう? ホースの出口を指で挟んで出口の面積を小さくするのではないでしょうか。それでは,出口の面積を絞ったまま,空気の圧力を上げていけば,出口の流速は音速を超えられると思いますか? 
答えは「ノー」です。難しい話は教科書に譲るとして,このようなやり方では,空気の出口流速は音速までしか加速できません。

空気の流速を変化させるために,流路断面積が徐々に変化するノズルを使いますが,ノズルの断面積変化の仕方により,先細ノズル(下流ほど流路断面積小)と末広ノズル(下流ほど流路断面積大)があります。先細ノズルを使えば,亜音速流(音速より遅い流れ)を音速まで加速できます。しかし,それより速い超音速流にするには,流路断面積が徐々に拡大する末広ノズルに流す必要があります。すなわち,ノズル出口で超音速流とするには先細ノズルと末広ノズルを組合わせた先細末広ノズルを使う必要があります。

極端な例になりますが,ロケットのエンジンを思い出してみてください。下の写真はスペースシャトルですが,機体後部に付いたエンジンノズルには末広部が付いていることがわかります。この末広部によりエンジンから噴射するガスを超音速で加速します。

スペースシャトル

以上のことを踏まえて,超音速飛行機のエンジンを見ていきましょう。

超音速飛行機のエンジン

まずはコンコルドのエンジンを示します。スミソニアン航空宇宙博物館で展示されているものを撮影しました。エンジンの吸入口のところが見えます。右の方にはエンジンの横側が見えていますが,さすがに中身はわかりません。しかたがないので,自衛隊の戦闘機エンジンを見ましょう。

コンコルド

下の写真は「F-2A/B」のエンジンです。最大速度はマッハ2.0(音速の2倍の速さ)です。排気口側を見ると,プレートが何枚か重なって設置されており,ノズル可変用機構でプレートの重なり具合を変えることによって,ノズルの流路断面積を変えられるようになっています。

F-2用エンジン

また,このエンジンにはアフターバーナー(エンジン排気に燃料を吹いて燃やし,より高温のガスにして噴き出すことでパワーを上げる装置)が付いています。アフターバーナの部品は排気口側からのぞき込むと見ることができます。アフターバーナ―の稼働するときの様子は下記サイトで動画で見られますので参考にしていただければと思います。
参考)https://www.youtube.com/watch?v=6ugGeP77NQc

F2用エンジンの排気口側

アフターバーナ―の使用によっても,適当なノズル出口の面積が変わってくるので,このノズル可変機構が役に立ちます。また,先ほど話したように,ノズル出口の流速を超音速にするには先細末広ノズルを使う必要があるので,可変ノズルにより制御を行っています。

超音速飛行機用エンジンについて,超音速にするには排気口のところのノズル(排気口流路)を先細末広ノズルにしないといけないことを説明しました。なんとなくわかっていただけたでしょうか? 旅客機は音速を超えないのでエンジンはもっとシンプルです。この違いの理由がわかっていただけたら幸いです。

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