翼端渦と飛行機雲

あれこれ

翼端渦があることを理解できたら,飛行機雲がどのように翼端渦と関係しているか見てみましょう。ただし,翼端渦と飛行機雲の関係は大変複雑で,例えば,あとでCrowの不安定性の話が出てきますが,常に同じような現象が出るわけではなく,ある条件がそろったときにそうなるというものが結構あります。そのあたりのメカニズムについては,文献を調べてより理解していく必要があると思っています。

可視化された飛行機雲の翼端渦

2024年3月27日に翼端渦のわかる写真が撮れました。飛行機雲は,

  1. 2本の翼端渦
  2. 翼端渦から取り残された飛行機雲(エンジン排気ガスの水分が凝縮して水滴になったもので,翼端渦に取り込まれなかったもの)

から構成されています。

飛行機雲と翼端渦

つぎは,翼端渦周りに飛行機雲が残っており,その中に2本の翼端渦が透けて見える写真を示します。このように翼端渦がきれいに見えるのは本当にまれなことです。

飛行機雲と翼端渦

エンジン4つの飛行機における飛行機雲の振る舞い

エンジンで排気ガスが出たり,翼端で翼端渦が形成されたりしますが,それらは同じ飛行機の離れた場所で行われます。そのため,両者が影響しあいながらある過程を経て飛行機雲の形を作っていきます。その様子についてみてみましょう。
下の図に飛行機(エンジンが4つ付いているもの)から出る排気ガスによる飛行機雲について示します。飛行機の左右それぞれ2本ずつ飛行機雲が形成されており,見る角度によってそれらの相対的な位置を推定することができます。
飛行機の真下から見れば,左右2本ずつの飛行機雲ははぼ対象に見えますが,斜め下方(この場合は飛行機の左下方からです。垂直尾翼の見え方でわかります)から見た場合,2本の雲間の距離が左右で異なります。飛行機の右側で雲間距離が小さく,左側で雲間距離が大きいので,4本の雲の配置は逆ハの字になっていることがわかります。これは,翼端渦の回転運動により,エンジンから出た流れが流された結果と考えられます。飛行機雲が飛行機から離れるに従い,左右の2本ずつの雲は翼端渦に巻き込まれていき,それぞれ合体します。その結果,飛行機雲はエンジン2つの場合と同じ2本となります。
ここまで書いてあるサイトは見たことがありません。是非,参考にしていただければと思います。

4発エンジンの飛行機における飛行機雲

エンジン2つの飛行機雲の振る舞い

つぎに,エンジンが2つ付いている飛行機についてみてみましょう。エンジンがふたつなので,次の写真では排気ガスからできる飛行機雲も2本となっています。エンジンふたつの写真を2枚並べていますが,飛行機雲の太り方は違います。上空の湿り具合で出方が違っている(下側の方が湿っている)と考えられます。

飛行機雲
飛行機雲

これに対し,下の写真はエンジンからすぐのところでは雲が2本であるのに対し,飛行機から少し離れると3本あるように見えます。これは推定ですが,翼端渦から取り残された飛行機雲が真ん中の線を形成し,外側の2本が翼端渦に取り込まれた飛行機雲だと思われます。たまに,飛行機雲が3本あるのでエンジンが3つあると誤解される方が見えますが,エンジンが3つある飛行機は最近では珍しいので,フライトレーダ24で機種を確認されるとよいかと思います。

飛行機雲

Crowの不安定性

翼端渦の渦管が平行に2本並んでいると,不安定になって(Crowの不安定性)いろいろな現象を見ることができます。それらを見ていきましょう。
Crowの不安定性が現れた3つの例をまとめて示します。

  1. 最初の写真は,渦にこぶのようなものがあるところが特徴です。また,ふたつの渦管は周期的にくびれていますが,これはCrowの不安定性でよく見る形です。
  2. ふたつめは,渦管が途切れ途切れになっていく様子を示しています。
  3. みっつめは渦管のうねる間隔が一番目のモノに比べずいぶん狭くなっています。この違いは何からくるのでしょうか? また,この飛行機雲は翼端渦にから取り残された飛行機雲が隣接して存在しています。
Crowの不安定性

翼端渦から取り残された飛行機雲と2本の翼端渦(翼端渦対)の関係を見てみましょう。下の写真は同じ飛行機雲を時系列で撮影したものを並べています。翼端渦は飛行機の飛行高度から下の方向に移動するので,時間とともに翼端渦から取り残された雲と翼端渦の間隔が広くなっていることがわかります。

Crowの不安定性

つぎは,2本の翼端渦のうち1本だけが先に消滅した例です。下の写真は,飛行機雲の背景にある雲を基準にして,飛行機雲のほぼ同じところを切り出したものです。上から下に向かって時間が経過しています。最初,2本の翼端渦がありましたが,片方だけがどんどん消えて行っています。片方だけが消えるというのは不思議ですよね。

Crowの不安定性

飛行機雲の小葉状雲

ブログの「飛行機雲から自然の雲へ」のところでもお話しした,飛行機雲にできる小葉状雲も翼端渦の影響でできたものでした。翼端渦の回転運動は空気の摩擦によりいつかは止まり,このようなきれいな雲を作って私たちを楽しませてくれます。

飛行機雲

飛行機雲についていろいろなことをお話してきました。翼端渦の存在を理解できれば,あなたも「飛行機雲博士」です。いろいろな飛行機雲をみて,新たな発見ができることを願っています。

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