山で出会える気象・自然

あれこれ

これからしばらく山で出会った気象や自然現象の話をします。
山へ行くと否応なく自然と向き合うことになります。私は大学時代に山に登りまじめました。その頃は布製の家形テントで,雨が降ればテントの中を川が流れていたり,稜線上を歩いているときには強風の中で飛ばされそうになったり,いまから思えばよく何もなかったなと思うことが結構ありました。
また,2014年9月27日 11時52分に起こった御嶽山の噴火については,その2週間前のほぼ同じ時刻 9月14日 11時47分(撮影した写真の時刻で確認)に,私は剣が峰(頂上)にいました。ですから,まったく他人事には思えませんでした。
そんな私が気象予報士になり,天気や自然のことについてお話しできるのも何かの縁かと思います。皆さんの山行が楽しいものになるように願いながら,いろいろ書いていこうと思います。

山で自然と向き合うこと

山はいつも住んでいるところに比べ標高が高く,視点が変わります。富士山(標高3776m)の頂上には,高いことに着目し雨雲レーダ(富士山測候所)が置かれていました。高いところからだと遠くまで見渡せるので,南海上で発生する台風の監視に使われていました。いまでは,気象衛星にその役割を讓り,レーダドームは撤去されてしまいましたが建物は残っています。いつもと違う高いところから見渡すと,いろいろなものが見えます。

富士山測候所跡

また,天気に関係する大気の対流圏の厚さは10000m程度ですが,高い山だと3000mくらいあり,ときには雲を下に見ることができます。さらに,空気の層を横から見る感じになるので,空気の性質の違うものが層を作っているとき,それをはっきりと観察することができます。下の写真は2023年9月10日 8時40分頃,御嶽山の標高2500m付近(女人堂と三ノ池の間)から撮影したものです。山のふもとの方には白っぽい層が形成され,その上に透明度の高い空気があります。白っぽい層と透明度の高い層の間には積雲がぽつぽつとあります。白い層は,地面で加熱されて対流が起こっている「対流混合層」,その上の層は「自由大気」です。教科書には対流混合層と自由大気の間に移行層があり,そこに積雲がある絵が載っていたりします。この辺りの詳しいことは,今後説明するつもりです。

対流混合層の可視化

また,人においては,いつもはスマホなどのちっちゃな画面を見ることが多い方も,山へ行けばおのずと周りを見るようになります。そこに気付きが生まれます。

自分で命を守るために

以前,山で天気を知るにはNHKラジオの気象通報を聞いて,自分で天気図を作図したり,自分の位置を知るには2万5千分の1の地形図を見ながら読図の能力を磨いたりしていました。しかし,最近では山の中でさえもいろいろな情報を簡単に得られるようになりました。
自分や仲間の命を守るために,それらの情報を自分のものとして活用できるようになっていただきたいです。そのためにも,最低限の知識は知っておいて欲しいと思います。
下の写真は2007年8月10日に剱岳に登った時のものです。頂上直下のカニのヨコバイに人が並んでいるところが見えます。このように危険なところに行くとき,悪天候の日は避けたいですよね。

剱岳のカニのヨコバイ

次回からは,「前線」,「対流混合層」,「積乱雲」などの話をしていく予定です。楽しみにしていてください。

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