航空気象観測

災害に備えよう

災害が発生したら航空機で救援が行われることがあります。航空機が被災地に来る場合,その被災地で航空機が低高度で飛ぶことができるか確認する必要があります。以前,私の住んでいる街の近くに航空自衛隊の輸送機C130が飛来してきたことがあり,そのとき可搬式航空気象観測装置で観測をやっていました。今回はその観測装置について紹介します。さらに,航空観測するときにレーザを使った観測を行いますが,レーザ観測についても考えてみようと思います。

可搬式航空気象観測装置

下の写真は航空自衛隊の使っていた観測装置の写真です。調べてみるとメーカはVaisalaで,このような装置をセットで売っているようです。
参考)Vaisalaのカタログ
https://www.vaisala.com/sites/default/files/documents/WEA-Catalog-2017-B211488JA-D_DL.pdf
計測器としては,上から風速計・風向計・温湿度計があります。そして地面にはシーロメータが設置されています。シーロメータとはレーザ光を上空に発射して,雲底の高さを測定する装置です。飛行機が飛ぶのに雲の高さは大事です。ですから,飛行場などにもシーロメータは設置されています。なかなか実物を見ることはありませんが,このとき初めて見ることができました。シーロメータの出しているレーザ光の波長は910nmの近赤外光なので目に見えません。レーザのクラスは1M,レーザポインタでもクラス2(クラスの数が大きいほど強力)のものがありますから,大体それと同程度か少し弱い出力と思われます。レーザを出す方よりも,反射して戻ってきた光を受光して,そこから雲からの反射成分を判断する処理のところのノウハウがありそうです。ゴルフや建築現場でもレーザ距離計が使われていますが,そこでもクラス2のレーザが使われています。人の安全を考えると,開放空間ではその程度のクラスまでしか使えないということです。

空港でもシーロメータが設置され,常時使われています。上向きにレーザを発射するので上に窓があり,その汚れや鳥の対策に苦労されているようです。現場での運用では,理想的な環境である実験室とは違った課題があって面白いですね。
参考)羽田空港 https://www.data.jma.go.jp/haneda-airport/weather_topics/rjtt_wt20140630.pdf
   那覇空港 https://www.jma-net.go.jp/naha-airport/kansoku/ceilo/ceilo.html

可搬式にするための工夫

可搬式航空気象観測装置で使われている計測器をアメダスで使われているものと比較すると少し違うところがあるので,それについて考えます。

まずは温湿度計です。アメダスでは,電動ファンで温湿度センサのところに強制的に空気を流していました。これに対し,可搬式航空気象観測装置では白い傘みたいなものが何重にもなって設置され,その中に温湿度センサが設置されています。白い傘で太陽の輻射熱や雨からセンサを守っています。通気性は確保されており,電動ファンなしで測定ができます。電源が限られた環境なので電動ファンがいらないというのはうれしいですね。

つぎに風向風速計です。アメダスでは風速計と風向計が一体となった風向風速計(風速は風車式)であったのに対し,可搬式航空気象観測装置は風杯式風速計を使っています。ここは私の推測ですが,可搬式の場合,移動時はコンパクトに収納できることが重要となるので,風向計と風速計を別体にし,風速計に風杯式を用いることで分解性・収納性を高めていると考えます。見るからに,可搬式の方が体格が小さく見えます。

以上のように可搬式にするためにいろいろ工夫がされています。

身近なレーザ距離測定器

シーロメータではレーザを使った雲底高度観測を行っていました。いまではホームセンターに行くとレーザ距離計というものを売っています。レーザを使って距離を測る装置です。レーザ距離計の場合はどこの距離を測っているかわかるように,目に見える光(可視光)のレーザを使用しています。会社で部屋の模様替えをするときに,部屋の中の壁からの距離を測るのに使ったことがあります。また,建設現場で距離を測ったり,ゴルフ場で距離を測ったりするのに使っています。昔はそんなものはありませんでしたので,便利になったものです。

レーザで距離を測るといえば,子供のころに聞いたことがいまでも印象に残っています。それは,地球と月の間の距離をレーザで測るというものでした。アポロ宇宙船が月にレーザを反射する鏡を設置し,地球からそれにめがけてレーザ光を発射して,戻ってくるまでにかかる時間から距離を求めようというものです。詳細は下記参考サイトをご覧いただくとして,コーナーキューブという反射装置を使うと光が来た方向に必ず反射されるというのを聞いて子供心に強いインパクトをもち,いまでも忘れません。
参考)月レーザ測距実験https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9C%88%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%82%B6%E3%83%BC%E6%B8%AC%E8%B7%9D%E5%AE%9F%E9%A8%93

近所のヤマダ電機に行くと,エントランスの部屋の内面がガラス張りになっており,自分の姿が壁に映ります。そのとき,部屋のコーナーの部分は2枚の鏡が90°の角度で配置されているので,2次元のコーナーキューブになっており,自分が移動しても必ず部屋のコーナーのところには自分の姿が映って見えます。ヤマダ電機に行くたびに,「コーナーキューブだ!」と感動します。

気象観測装置から,最後は少し脱線してしまいましたがいかがでしたでしょうか? 山で遭難したときもヘリコプターが飛べばすぐに助けてもらえますが,天候が悪ければそうもいきません。航空機が飛ぶ陰で気象に関するいろいろな観測がされていることを知っていただけたのなら幸いです。

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