アサギマダラさん,いらっしゃい

あれこれ

アサギマダラという蝶のことを聞いたことはありますか? 渡りをする蝶として有名で,蝶たちのことがよくニュースになります。私の家の近所にもアサギマダラの飛来する山(三ヶ根山,遠望峰山など)があり,秋になると多くのアサギマダラに会うことができます。
しかし,この春「はて?」と思うこと,具体的には「アサギマダラについて不思議に思うこと」が頭の中から離れません。今回はそのことについて考えましょう。

アサギマダラさん,春はどこを通って行くの?

うちの近所で見かけるのは必ず秋(10月頃)です。春に見かけたことはありません。旅する蝶は夏に北の涼しい地方へ行き,冬は南の暖かいところ(沖縄や台湾)へ移動します。ですから,春は北上し,秋には南下する旅をするはずです。春と秋のそれぞれのタイミングで,アサギマダラを目にしてもよい気がします。なぜ,この地方(愛知県の三河地方)で春に目にすることはないのでしょうか?
調べてみると,大分県姫島で5月頃に春の飛来が見られたり,奄美大島や喜界島(写真)で3月~6月にかけて見られるというような情報がありました。通り道となっているところで目撃されているということを考えると,私の住んでいる地域は春の北上ルートには入っていないか,素通りされていると考えられます。
参考)大分県姫島 https://www4.hp-ez.com/hp/himeshima/
   奄美大島・喜界島 https://amamishimbun.co.jp/2022/04/20/37399/

アサギマダラの渡りルートはいろいろな方の努力により明らかにされてきています。その方法は,アサギマダラを傷付けないようにして捕獲し,羽根に油性マジックで決められたルールに従ってマーキングするものです。その後,放してやり,次に捕獲した人が記載されたマークを見ると,以前,いつどこで捕獲されたものかわかります。一般市民の方が参加してマーキング会も頻繁に開催されているようなので,興味があれば参加されてみるのもよいと思います。
そのようにして明らかにした渡りルートをまとめたものがインターネットに公開されていました(下図)。大まかなルートの記載しかなかったので詳細は分かりませんが,春の北上ルートと秋の南下ルートは微妙に違うように描いてあります。この違いの原因は何でしょうか? 私が勝手に考える原因として以下のものがあります。

  1. アサギマダラの好きな花が咲いている地域が春と秋で異なる
  2. 渡りに必要な風の吹く方向が影響している
  3. アサギマダラの体調や渡りの事情が異なる

春,南の方から海を渡って日本の本州・九州・四国あたりまでこれば,あとは陸地に沿ってのんびり行けばよいので,好きな花の咲いているところをゆっくり北の方向へ進んでいけばよく,アサギマダラが集まって移動する必要がないということもあるかもしれません。

これに対し,秋は陸地から海を渡って南の島に行く必要があります。また,アサギマダラの好きな花(アザミなど)が三河地方に咲いています。そこで栄養をたくさん貯めこむため,しばらく滞在することも考えられます。風向きも本州から沖縄方向へはなかなか吹かないと思いますので,南下する方が移動も大変だと思います。このため,三河地方にアサギマダラが集結し,私たちの目に触れるのかもしれません。

真夏に出会ったアサギマダラ

真夏にアサギマダラに会うことができます。高い山に登ったときに「こんなところにアサギマダラがいるのか!」と感動したことがあります。富士山に登ったときにも会いましたが,白山に登ったときに写真を撮ったので紹介します。白山ヘは2017年8月14日に登りました。大白川ダムから平瀬道を日帰りでした。下の写真にあるように登山道の脇には高山植物の花が咲いています。

白山の平瀬道登山道と道標

登山道脇に咲いた花にアサギマダラがとまり,密を吸っています。

白山のアサギマダラ

アップで見ます。ストロー状の口を伸ばして花の中に突っ込んでいることがわかります。
涼しい北へ行くアサギマダラもいれば,このように涼しい高山で夏を過ごすアサギマダラもいます。

白山のアサギマダラ

秋に出会ったアサギマダラ

秋になると我が家の近くにやってきて,時期によっては近所の山で乱舞しています。アサギマダラはアザミが大好きで,アザミの花が咲いているところでよく見かけます。
下の写真は2023年10月22日の三ヶ根山で撮影したものです。南の方へ渡る途中で立ち寄ったもので,季節的には,渡り時期の最終盤です。そのため,このときはあまりアサギマダラには会えませんでした。

三ヶ根山でアザミの密を吸うアサギマダラ

下の写真は2020年10月4日に遠望峰山で撮影したものです。ちょうど渡りのピークでたくさんのアサギマダラに会いました。こちらも大好きなアザミの密を吸ています。

遠望峰山のアサギマダラ

アサギマダラの渡りは不思議なことばかりです。ひらひら飛んでいるだけで海を越えて渡って行けるなんてびっくりします。特に秋に南の方へ行くときに,なぜ方向を間違えないのでしょうか? 少し方向を間違えてしまったら,大海原の中で路頭に迷ってしまいます。どのくらいの個体が生きて南の島に到達できるのでしょうか。是非,アサギマダラさんたちに聞いてみたいものです。

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