上空の流れを可視化する雲たち

あれこれ

今回は上空の流れを可視化する雲について考えましょう。この雲が出ると「空気がこんな流れをしているのだな」と想像できる雲のことです。いろいろな雲がありますが,以下の3つの雲を取り上げます。どれもなかなか出会えませんが,知っていれば出会ったときに気付くことができます。是非,関心を持っていただければと思います。

  1. 乳房雲(上に示した雲も乳房雲です)
  2. アスペリタス
  3. ベナール対流

乳房雲

まずは乳房雲です。少し前のブログでかなとこ雲に乳房雲ができているところを紹介しました。今回は下の写真に示すようにかなとこ雲ではありません。空全体が灰色の雲に覆われ,その一部に乳房雲が現れていました。丸いブドウの粒が房のように集まっているように見えます。ブドウの粒のように見えるところで下降流があり,粒と粒の間に上昇流があると考えられています。下降流は上昇流で押し返されて底部が円弧状になってブドウの粒のように見えます。きれいな形でバランスするものですね。

乳房雲

アスペリタス

下に2枚の「アスペリタス」と呼ばれる雲の写真をお見せします。何だか不気味な感じのする雲なので,実物を見ると印象に残るかもしれません。アスペリタスは雲底に波のような構造をもっており,「近くで発生した降水現象も伴う大気重力波が雲底で可視化されたものと考えられています。」(荒木健太郎さん著「雲を愛する技術」より引用)

この雲は2017年に国際雲図帳に副変種として取り上げられたもので,他の雲に比べて命名されてからの歴史が浅いです。日本語での呼び方は「荒底雲」(新・雲のカタログ)というのが提唱されていますが,どういう名前に落ち着くか楽しみです。

アスペリタス
アスペリタス

ベナール対流

最後は「ベナール対流」です。みそ汁が対流したときにできる模様でおなじみです。ネットで調べると「鍋やフライパンを使って自分でベナール対流を発生させてみましょう。」という自由研究のネタ的なものがたくさん出てきます。

ベナール対流は,対流の上昇と下降によりセルと呼ばれる細胞のような形のものがたくさん並んでできます。下のふたつの写真を見ると,雲の塊1つずつがセルに相当します。雲と雲の間に青空が見えるところがありますが,そこで下降流,雲のところで上昇流となっています。幾何学的な模様でとてもきれいです。

ベナール対流の雲
ベナール対流の雲

雲のでき方を知ると,空気がどんな流れをしているか想像できる場合があります。それを知ると,雲を見ることがより一層楽しくなると思います。皆さんにその喜びを感じていただければ嬉しいです。

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