雲海・滝雲・冷気の流れ

あれこれ

今回は放射冷却でできる雲海・霧・冷気やその動きについて,実際の写真を見ながら考えましょう。上の写真は富士山に須走口から登山したときに見た雲海です(2011年7月14日 6時頃撮影)。太陽の位置から南東方向(御殿場方向)にできた雲海と思われます。夜に風の弱い日,放射冷却により地上付近の空気が冷やされると,冷気が谷底に溜まり,そこに雲や霧が発生して雲海ができます。山を登った朝に雲海を見るとその美しさに感動します。雲海を愛でながら,雲や冷気の動きを見てみましょう。

山の上から見た雲海

下の写真は御嶽山の女人堂から見た雲海です(2013年8月3日 7時30分頃撮影)。槍ヶ岳・奥穂高岳・前穂高岳が雲海の上に見えています。手前の山は乗鞍岳です。

御嶽山の女人堂から見た北アルプス方向の雲海

滝雲

つぎの写真も御嶽山からの眺望です。撮影は2014年9月14日 7時20分頃です。御嶽山近くの谷には雲海がありませんが,遠くの谷に雲海が見られます。そして,その雲海にできた冷気は周りの稜線を乗り越えて,隣の谷に流れ込んでいます。いわゆる滝雲となっています。近くでこの滝雲を見たらとてもきれいだと思います。

御嶽山から見た滝雲

滝雲で有名なものとして,三重県の「風伝おろし」があります。ネットを検索すると動画が出てきますし,秋になると必ずニュースになっています。よかったら調べてみてください。

放射冷却による霧の発生

私の家の近くでも,秋になると放射冷却で霧が頻繁に発生する地域があります。愛知県幸田町の相見地区です。この地区は田んぼが広がり,そこに川が流れているので住宅街に比べ水蒸気が豊富に供給されます。また,北側(岡崎側)を除いた3方が山に囲まれているので冷気が貯まりやすいです。そのため,下の写真(2019年11月1日 6時30分頃撮影)に示すように,秋になると霧が発生します。幻想的でとても好きな光景です。

幸田(相見)の放射霧
幸田(相見)の放射霧

つぎの写真(2023年11月23日撮影)は幸田町にたくさんの霧が出て,近くの山(遠望峰山)から見ると雲海が見られた様子です。街が低い霧(層雲)に覆われています。

幸田の雲海

霧(冷気)の流出

上に示した幸田の霧がたくさん発生すると,幸田と蒲郡を結ぶ谷を通って霧が流れてきます。下の写真にその地形を示します。その谷はほぼまっすぐに幸田と蒲郡を結んでいて,そこにJR東海道線や国道248号線が通っています。蒲郡は海に面しています。そのため,放射冷却があっても幸田ほど気温は下がりません。ですから,蒲郡に比べ幸田の方が気温が低く,この気温が低くて密度の高い空気が霧を伴って蒲郡側に流出します。

この現象が記載された文献を見たことがないので,これは私が新たに発見した現象だと思います。是非,詳しく観測するつもりです。研究成果が出るときを楽しみにお待ちください。

幸田と蒲郡の間の地形

ここから,幸田から蒲郡に流出した霧が線状の雲となって三河湾上を流れて行く様子をご覧いただきます。この雲は気象衛星「ひまわり」の可視画像でも,よく見ると存在を確認することができます。その画像からも幸田から蒲郡に流出していることがわかります。

1枚目は2017年7月29日 6時10分頃撮影したものです。2枚をパノラマ合成しているので,水平線に1か所段差ができています。写真の真ん中の島は三河大島で,西浦半島から撮影しています。雲の筋が1本,海の上にあります。これが幸田の霧が流れてきているものです。

幸田から三河湾に流出した霧

2枚目は2021年9月23日 5時50分頃撮影したものです。右手に見えている島は三河大島です。これも雲が1本伸びています。先端では雲が消えてます。

幸田から三河湾に流出した霧

3枚目は2022年3月31日です。この流れは上の2枚と異なり,地面に霧が接しながら流れています。海面上はわかりにくいかもしれませんが,海と空の間にある層が霧が流れているところにあたります。

幸田から蒲郡に流出した霧

この現象が発生すると,蒲郡の霧の通り道になるところだけが局所的に霧が出ており,とても不思議な気分になります。

霧が流れるというと,川の上を霧が流れる「川内川あらし」が有名です。蒲郡のこの霧の流れも「がまあらし」とでも名付けて有名にしていきたいです。

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