雲の影から地球の影へ思いをはせて

あれこれ

針の木岳に登ったときのことです。朝,ご来光を見た後振り返ると,針の木岳の影がきれいに雲へ映っていました。針の木岳頂上の影の部分がしっかりわかります(2009年8月15日撮影)。針の木岳の影に入ったところに住んでいる人は,まだ朝が明けていません。上から俯瞰してみると全体像がつかめますが,下にいる人は「まだ夜が明けないな」と思う程度ではないかと思います。
今回は,そんな影が作り出す自然現象について見ていきましょう。

雲の影

下の写真は御嶽山から周りを見下ろして撮影したものです(2014年9月14日撮影)。黒っぽい模様が牛(ホルスタイン)の模様のように現れています。これは雲が作り出した影です。地表面の凹凸により模様の輪郭がでこぼこしたものになっており,とても芸術的です。下から見れば,「太陽が雲で隠れたな」と思うだけですが,上から見るとこんな素晴らしい景色に会うことができます。

御嶽山から見た雲の影

地球の影・月食

つぎは地球の作る影が作り出す自然の美しさを見ましょう。月食です。月食は月が地球の影に入って起こります(下図)。月が影に入ると真っ黒になってもよさそうですが,実際には下の写真にあるように赤銅色に見えます。これは,地球の大気で屈折した光が当たることで見える色です。光が大気を通過してくることで朝焼けや夕焼けのように赤っぽい光だけが残り,このような色になるのです。時々の大気の状態(チリの多さなど)によって,その色や明るさは変化します。

月食が赤銅色に見える理由

下の写真は天王星食が起こった2022年11月8日に撮影したものです。月の下側に青い天王星が写っています。この月食を観測していたとき,肉眼では天王星が確認できなかったので,写真を見たときは感動しました。月の右側が影の中心に近い側になるので赤銅色が濃く,月の左側は影の端に近いので白っぽく写っています。

2022年11月8日の月食,天王星食

つぎの月食の写真は2021年11月19日に撮影したものです。このときは,地球の影の端っこをかすめて通ったので,月が地球の影の端っこにある時間が比較的長いという特徴がありました。影の端っこは地球のオゾン層を通ってきた光が青っぽいことから,月も青っぽくなる「ターコイズフリンジ」が有名になりました。写真でも,白っぽいところと赤銅食の間が青っぽく写っています。

2021年11月19日の月食,ターコイズフリンジ

月の影・日食

つぎは月の影,「日食」です。月が作る影は地球が作る影より狭いので,なかなかお目にかかることができません。下の写真は2020年6月21日に撮影した部分日食です。このときはアジアからアフリカにかけて金環日食が起こりました。日本ではご覧のような部分日食でした。

2020年6月21日の部分日食

2012年5月21日には日本で金環日食が観測されました。私の住む三河地方でも金環食が見えるはずでしたが・・・。梅雨の直前ということで天気があまり良くありませんでした。それでも食の初め頃は薄い雲を通して下の写真のようにかなり欠けた太陽を見ることができました。しかし,無情にも雲の厚さがどんどん厚くなり,金環食となる時間には全く見ることができませんでした。それでも,少し暗くなったとか,気温が下がったということを感じ,体感としてはこういうことが起こるのかと知ることができ嬉しかったです。

2021年5月21日の金環日食前の部分日食

つぎに日本で見られるのは,金環食:2030年6月1日,北海道,皆既日食:2035年9月2日,茨城県から石川県付近です。是非,見に行きたいと思います。

地球の影・地球影

最後に地球の影を見ましょう。これは,気象条件さえ合えば結構な頻度で見ることができます。下の写真は西浦半島の山の上から東の空の夕焼けを撮影したものです(2019年1月4日撮影)。夕焼け(ビーナスベルト)の下側に暗いところが見えます。これが地球の影です。写真の右半分と左半分では撮影時刻が異なり,左側の方が遅い時刻となっています。そのため,地球の影が広がっていることがわかります。晴れた日の朝や夕方に太陽と反対側の空を見てみてください。このような地球の影が見えるかもしれません。そして,地球の大きさに思いをはせることができると思います。

地球影

まとめ

影といってもいろいろありました。影を作るものも違えば,そのスケールもいろいろです。光があれば必ず影もあります。影を見ながら色々感じてみてはいかがでしょうか。また,次の日本での皆既日食を是非一緒に楽しめるように,健康に長生きしましょう。

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