梅雨の時期になると大雨が降って毎年どこかで土砂災害が起こります。2014年7月9日に長野県の南木曽で土石流災害が発生しています。いまからちょうど10年前になります。わたしはそこを2018年に訪れました。発災から4年後でしたので復旧工事は完了し,次の土石流が来ても大丈夫なような備えがされていました。今回はそのことについてお話ししましょう。
蛇抜けの碑
国道19号線を車で走っていると南木曽のあたりで立派な吊橋を見ることができます。「桃介橋」という国の重要文化財で歩いて渡ることができます。
そのわきに天白公園があり,そこに「蛇抜けの碑」があります。「蛇抜け」というのはこの地方の言葉で土石流のことで,1953年にこの場で3名の方が亡くなった土石流災害の教訓を伝えるものとして建てられました。
参考)https://www.jsece.or.jp/event/conf/abstract/2010/pdf/P-226.pdf
木曽谷では急峻な斜面が民家の裏に迫っているので,この災害の後にも土石流災害が繰り返されています。記憶に残るのは同じく南木曽で発生した梨子沢土石流です。
梨子沢土石流
梨子沢は桃介橋から1kmも離れていないところにあります。10年前の土石流ではJR中央西線の線路もかなりのダメージを受け,特急「しなの」が長いこと運休になりました。その時期,ちょうど出張で長野県の上田に行く用事があり,わざわざ東京経由で行ったことを覚えています。
災害の原因や様子は各種報告書にまとめられています。例えば以下のものがあるので参考にしてください。
参考)https://www.cbr.mlit.go.jp/tajimi/fureai/saboucard/nashizawa_dai2_gaiyou.pdf
土石流の発生するタイミングでは3時間で100mm以上の雨が降っており,土石流により死者1名,家屋の全壊10棟の被害が出ています。
発災後4年後の様子が下の写真です。復旧工事はすでに終わっており,川がきれいに整備されています。この写真の中に「川の写真撮影地点」とありますが,そこから上流側と下流側を撮影しました。また,その地点より手前側に家の建っていない地域が広がっていますが,土石流はこのあたりの家屋を飲み込んで流れ下りました。地図を見るとわかりますが,「川の写真撮影地点」と書いたあたりで川が左側に少し曲がっていて,そこから多くの土砂があふれて流れ下りました。
下の写真は下流側,そのさらに下の写真は上流側を見たものです。いまではきれいに整備されています。
また,ここにはライブカメラが設置されていて,いまの様子をWEB上で見ることができます。
https://www.cbr.mlit.go.jp/tajimi/desk/sabou_032.html
そして,災害の記憶を残すために,ここにも「じゃぬけの碑」が作られました。
最近は,短時間で多くの雨が降る傾向が以前に比べ強くなっています。今回紹介した土石流に限らず,河川の増水,道路の冠水など,さまざまな災害が起こる可能性があります。これらの碑が伝える教訓を忘れないようにし,予想されるものに対しては備え,予想を超えてくるものに対しては,そのときできる命を守る行動を最大限にしていきましょう。