大気により変わる太陽の見え方

あれこれ

これまで,朝日や朝焼けを見ながら色の話をしてきました。今回は大気により光が曲げられて太陽の見え方が変わることについて考えましょう。

最初の写真は朝日を撮影したものです。何気ない写真に見えますが,太陽の一番上のところが緑色になっていることがわかります。これは「グリーンフラッシュ」という現象で,太陽の光が大気を通ってくることによって起こるものです。他にもいろいろな現象がありますので詳しく見ていきましょう。

大気による太陽光の曲がり

太陽の光は真空の宇宙空間を伝わってきたあと地球の大気を通過し,地上にいる私たちの目に届きます。大気中の光の速度は真空中より小さくなり,空気の密度が大きいほどその速度は小さくなります。大気中では,標高が低いほど空気の密度が大きいため,光の速度は小さくなります。その結果,光の進む方向は地面の方に曲げられて,イメージとしては下図に示すような上に凸の経路となります。太陽の下側は上側に比べ大気を通る経路が長くなるため,曲がりが大きくなります。

見ている人は,光が来た方向をまっすぐ伸ばしたところに太陽があると感じるため,下の図に示すように,実際の太陽の位置より高いところに太陽があるように見えます。

太陽が楕円に見える理由の説明

太陽の上側と下側で光の曲がり具合が異なるため,太陽の高さ方向の径は短くなり,下の写真に示すように楕円形となります。この曲がり具合は,大気の状態や太陽の高さに影響を受けます。ですから,日や時刻によって楕円の形は異なります。

また,光の波長(色)によって光の進む速さ(屈折率)がわずかに異なり,赤より緑の方が曲がりやすいので,運がいいと太陽の上側が緑色に見えることがあります。これがグリーンフラッシュです。

楕円に見える朝日の写真

大気によって太陽の光が曲げられるのは,皆既月食の色を説明したときにもお話ししました。大気を太陽光が通るとき曲げられるので地球の影に光が届き,そのとき,赤い光が大気を通過できるので月は赤銅色に見えました。

月食が赤銅色に見える説明図

大気の層による太陽の見え方の変化

下の写真は最初に示したグリーンフラッシュの写真と同じ日に撮影したものです。朝日が昇っていくところの写真を並べました。太陽が昇っていく途中で,太陽の上側が変形しているのがわかります。ここに大気の逆転層(高さ方向の温度変化の傾向が,その上下と異なる)があります。

逆転層で変形した朝日

つぎの写真は2006年1月27日に撮影したものですが,大気の層が3つあることを示しています。真ん中の層の厚さは太陽の高さとほとんど同じです。3層が可視化されたというのはかなり珍しいのではないでしょうか。

朝日で可視化された空気の層

下の写真は以前に出しましたが,ふたつの大気の層の間を太陽が横切るときのものです。下の層と上の層で温度分布の傾向が異なるので,層の境目の上下で太陽の形が異なっています。

ふたつの空気の層の境目で変形した太陽

まとめ

大気によって光が曲げられて,宇宙にあるものの位置が実際の位置と異なるところに見えるのは「大気差」と呼ばれています。これは星でも起こります。また,大気で太陽の光が曲げられる影響は日の出時刻や日の入り時刻にも影響しているので,身近に影響している現象です。今回は簡単に説明しましたが,自分で調べてみると面白いことがわかると思います。また,このブログでも詳しく説明する機会を作れたらいいですね。

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