光芒(こうぼう)という言葉にあまりなじみのない方も多いかと思います。「光芒」をグーグル先生の翻訳にかけると「beam of light」と出てきます。「光が筋状に見える現象」の総称のような気がします。筋の幅が狭いものから広いものまであるので,Wikipediaでは太陽柱まで光芒の中に含まれています。
今回は太陽の光がたくさんの筋状に見える現象について見てみましょう。中学生のころ,理科でチンダル現象というのを習ったと思います。粉体工学用語辞典によれば「チンダル現象」とは「空間に不規則に浮遊する多数の粒子からなる系が光によって照射されて光が周囲に散乱されるとき,入射光に斜めの方向から眺めると光の筋が見える現象をいう。」
要は「漂っている粒子で光が散乱され,周りからその光が見えますよ」ということです。太陽の光芒の場合は空気中に漂うチリなどの粒子に光が当たって「ミー散乱」して,光の筋が見えています。
朝日の光芒
それでは,朝日の光芒を見ていきましょう。下の写真は朝日がちょうど昇るところですが,雲と雲の間からスリット状に光が差し込んで光芒が見えています(2017年9月30日撮影)。光の暗い部分ができるので明るいところが筋のように見えるのですが,暗い部分の太陽に近い側に雲があると考えられます。
朝日に光芒が付いたもののは,いろいろなところにデザインとして用いられています。例えば,朝日新聞の社旗は朝日に光芒の線が付いています。
参考)https://www.asahi.com/corporate/guide/outline/shorthistory/14504588
つぎの写真は2024年1月1日の初日の出のときの写真です。対岸に渥美半島がありますが,その少し上に雲があり,雲の影が長く伸びています。影とそれを作っている雲の対応がわかりやすいので,光芒のでき方を理解しやすい写真だと思います。
朝日の光芒3枚目(2020年11月1日撮影)を見てください。これは,光の筋の後ろ側に暗めの色のものがあると光の筋が見やすい例です。山と雲の間から光が差し込んでいます。光の筋は雲のあるところでは見やすいですが,その上側の雲のないところでは光の筋がわかりません。
光芒が見えるためには,いろいろな条件がそろうことが必要なようです。
天使のはしご
「天使のはしご」という言葉には「はしご」と付いているように,空と地上(海上)の間にはしごをかけたように見える光の筋ということになります。その光の筋を登って行けば,空にたどり着けるイメージです。太陽の光は太陽から出て放射状に伸びていますので,下の写真(2023年9月5日撮影)に写っている天使のはしごの光の筋を雲の上まで伸ばしていくと,その交わったところに太陽が存在します。
下の写真(2019年9月19日 6時19分撮影)は天使のはしごが照らした先に豊橋の市街地がきれいに写っています。豊橋の街には新城の谷で発生した霧が流れ込むことがあり,その霧が市街地の向こう側を流れています。夜のうちに地上付近の気温が下がり,霧の上には逆転層があります。霧が天使のはしごで照らされて液晶テレビのバックライトのようになり,市街地のシルエットが浮かび上がっています。
天使のはしごと霧の層の共演です。自然はいろいろな演出をしてくれます。
まとめ
光芒が見たければ、太陽の光が差し込む部屋の中で布団をたたくとか,ほうきで床にたまったほこりを巻き上げるなどしてみてはいかがでしょうか。簡単に光芒が出現します。しかし,健康にはよくなさそうなのでやめておきましょうか。その代わり,空を見上げる機会を増やしてみてください。光芒との良い出会いがあるかもしれません。