最初の写真は輪島の有名な観光地「千枚田」です(2024年8月8日撮影)。撮影は8月ですので,地震の前なら稲が青々と育ち,そろそろ稲穂が出てくる時期かと思います。しかし,今年は一部の田んぼにしか育っていません。およそ8割の田んぼに亀裂が入るなどして大きな被害を受けたそうです。
参考)白米の千枚田 ボランティアが田植え
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240518/k10014453441000.html
無数の亀裂くっきり https://www.agrinews.co.jp/news/index/211361
幸いにも地滑りなどは起きなかったので田んぼの原型をとどめており,修復して復活できそうですが,他の山の斜面では至る所で斜面崩壊・地すべりが発生しました。今回はそれらを見ていきましょう。
斜面崩壊に関する用語はいろいろあるようですが,ここでは以下のサイトの用語を参考にしました。
参考)自然災害について学ぼう 斜面崩壊・地すべり
https://dil.bosai.go.jp/workshop/01kouza_kiso/15houkai.html
至る所で発生した斜面崩壊・地すべり
のと里山海道では斜面崩落が起こり,路盤が至る所で失われたため,発災直後は通行止めになりました。のと里山海道の現場はなかなか見ることができませんが,私が見て撮影できた斜面崩壊・地すべりについて順番に紹介します。
下の写真(2024年8月9日撮影)は竜ケ埼灯台下の弁天社と金毘羅社のところから斜面崩壊を見たものです。写真の下の方に少し看板が見えていますが,地震の前はこの看板の左側に車一台通れるくらいの道路がありました。斜面は金網で落石防止処置がされていましたが,崩れてしまっています。
下記の文献によれば斜面崩壊の形態は以下の3つに大別できます。
参考文献)令和6年能登半島地震による斜面崩壊の形態とその発生要因
https://www.jsece.or.jp/event/conf/abstract/2024/pdf/R3-8.pdf
- 表層崩壊型:斜面上に堆積した1~2mの表土層が剥離滑落する
- 地すべり性崩壊
- 岩盤が崩落する形態
この分類からすれば,先ほどお見せした斜面崩壊は「岩盤が崩壊する形態」に見えます。
下の写真は海沿いの急傾斜地を見たところですが,斜面が崩壊している箇所が何か所もあることがわかります。表層の土が滑り落ちており,表層崩壊型と考えられます。先ほどの文献によれば,この型の崩壊が最も多く見られたようです。
つぎに地すべり性崩壊について見てみましょう。地すべり性崩壊は,ある面を境にしてその上の土塊(斜面の一部)が滑って高速かつ長距離移動する現象です。崩れた上部には滑った面が見えて,「主滑落崖」と呼ばれています。下に輪島で撮影した地すべりの写真を示します。
1つ目は遠くの山の斜面に見えていたもので主滑落崖があり,その下に滑り落ちた土塊が見えます。二つ目は,道路の脇にあった崩落面で,これも主滑落崖が見えます。崩れた土塊の上に道路があったので,道路もろとも流されて,アスファルトはバラバラになってしまっています。
3番目は比較的緩斜面での崩壊ですが,滑り落ちた土塊がせり出してきている様子がわかります。
市ノ瀬地区
下の写真は輪島の市ノ瀬地区の地すべり現場です。市ノ瀬地区では民家の近くで地すべりがおこり,さらにそれによって川がせき止められてしまいました。ここは輪島とのと里山海道を結ぶ道路のすぐ脇にあるので大変目立ちます。かなり大規模な地滑りが起こっており犠牲者も出たようです。この近くには,いまでも避難指示が出ているところがあるので,早く日常に戻れることを祈っています。
参考)市ノ瀬地区の避難指示 https://www.city.wajima.ishikawa.jp/article/2024050100020/
まとめ
この記事を書くにあたり,いろいろな文献を調べました。能登半島地震で多くの斜面崩落が起きていることは能登半島地震の特徴でもあり,いろいろな方が調査をしています。しかし,一般の方にわかりやすく書かれた記事は見当たりませんでしたので,私の記事が皆さんのお役に立てれば嬉しいです。