「虹は何色ですか?」と聞かれたらどう答えますか?
多くの方は「7色で内側が紫,外側が赤色です」と答えるかもしれません。虹が7色といったのはニュートンさんで,その色の並びは下の図に示すようなものだといわれました。実際の虹の色を見てみると,7色に見えるかどうかは人の感性によると思いますが,内側が紫,外側が赤というのは間違いないようです。
しかし,すべての虹の色がこのような色の並びになっているのでしょうか?その答えは「否」です。下の写真(2020年12月25日撮影)をよーく見てください。明るい虹の内側に赤とか緑色があることに気付きませんか? これは過剰虹と呼ばれており,普通の虹の出方とは異なるメカニズムで出現します。今回はこの過剰虹について見てみましょう。
過剰虹
過剰虹は必ず見られるというものではありません。ある条件がそろったときに見られます。まずはそれが見られたときの写真を詳しく見ましょう。
下の写真(2024年2月18日撮影)は過剰虹がきれいに見えたときのものです。説明をわかりやすくするため,色調補正して過剰虹の色を濃くしてみました。その写真を見ると,普通の虹の内側に虹と同じ配色のものが2回繰り返して出ていることがわかります。繰り返して現れるのは過剰虹の特徴です。
過剰虹についての解説はつぎの文献があります。
参考文献)https://www.metsoc.jp/tenki/pdf/1999/1999_01_0003.pdf
過剰虹が見える原因は光の干渉で説明されています。また,過剰虹の間隔や帯の幅は雨粒の大きさによって変化するため,雨粒の大きさに分布があると過剰虹が重なり合ってしまい,はっきりとは見えません。そのため,過剰虹が出るには雨粒の大きさがそろっている必要があります。
いろいろな過剰虹
それでは,私の撮影したいろいろな過剰虹の写真を見てみましょう。
下の写真(2023年9月11日 7時33分撮影)は太陽高度24°のときのものです。明るい虹の青い帯の内側に結構広めの過剰虹が出ていることがわかります。これは,前の例と異なり,過剰虹の色が繰り返して出ているわけではないようです。
下の写真(2024年1月21日 12時23分撮影)は太陽高度35°のときのものです。太陽高度が高めなので家のすぐ上に虹が出ています。青色の帯の内側に赤や黄色の帯が見えます。これが過剰虹です。
さらに虹が大きく写っている写真を示します。下の写真(2024年2月18日 16時25分撮影)は太陽高度13°のときのものです。大きく写っているので,紫の帯の内側に赤・黄・緑・青があるのがわかると思います。また,下にある緑の小山が虹で色付いており,虹は小山の手前側に現れていることがわかります。
過剰虹についてどんなものかご理解いただけたでしょうか? 私は気象予報士になって勉強するまで過剰虹の存在を知りませんでした。それまで虹を幾度となく見てきたので,過剰虹を目にする機会もあったと思います。しかし,知らないので素通りして認識できていなかったのです。知ることは見えるようになることです。皆さんにも知っていただき,認識いただければ幸いです。