虹色を探そう・構造色のいろいろ

あれこれ

皆さん,「構造色」という言葉を聞いたことはありますか? 絵具やペンキ・染料などで色を付けているのではなく,表面の微細構造によって色が付いて見えるものをいいます。高校で物理を習われた方は「ニュートンリング」を覚えておいででしょうか? 平板状のガラスの上に,球面状なったガラスを置くと,平面で反射した光と球面で反射した光が干渉して,色のついたリング状の模様が見えるというものです。この色が構造色です。
参考)ニュートンリング https://www.osaka-kyoiku.ac.jp/~masako/exp/newton/top.html

自然界や人工物では,ニュートンリングのような原理で色が付いて見えるものがいろいろあります。今回は,まず虹色を作る実験を行い,そのあと構造色を探していきましょう。

虹色を作ろう

まず,太陽の光の中にはいろいろな色の光が混ざっていることを思い出すために簡単な実験を見ます。下の写真には丸いグラスが写っています。このグラスに太陽光を当ててみると光の明暗はできますが,虹色はできません。しかし,グラスに水を入れると・・・あーら不思議,虹色が現れました。ガラスにおける光の屈折率は光の色(波長)によって異なりますが,水を入れていないとガラスの中を進む距離が短いので,光が目に見えてわかるほどは分かれなかったのです。しかし,水を入れることで空気でないところを通る経路が長くなり,目でみてわかるくらいに色が分かれてくれました。

グラスにより虹色を作る実験

このように太陽光には,いろいろな色の光が入っているので,これを選択的に取り出すことができれば色が付いて見えます。下の写真は,スマホ画面に太陽光を当てて,反射してきたところを見ています。写真は画面の保護フィルムが付いていたので保護フィルムの影響かと思いましたが,後日,保護フィルムがない状態で同じことをしてみたら虹色が出ましたので,画面の微細構造により虹色が出ているものと思います。このように,色が付いて見えるのが構造色です。

スマホ画面により虹色を作る実験

自然界の構造色

構造色を理解したところで,自然界にある構造色を見ましょう。きれいな鳥たちは構造色をまとっていることがあります。下の写真は家の近所にいたハシビロガモです。顔周りを見ていただくと,真横から見たものでは(左側の写真),目の周りが緑色で,頭の後ろの方に行くに従い青色が濃くなっています。斜め後ろから見ると(右側の写真)頭が青く,目の周りの緑はなくなりました。羽根自身に色が付いているわけではないので,見る角度によってこのように色が変化します。

ハシビロガモの構造色

つぎはハトさんです。家にツバメが巣を作ると歓迎されることが多いですが,ハトが巣を作るととても嫌がられるという,不思議な存在のハトさんです。「じっくり見たことがないよ」という方もいらっしゃるかと思いますが,写真を見ていただくとわかる通り,首回りがきれいな構造色をしています。
詳しく研究されている方が見えますので,深く知りたい方はそちらを参考にしていただければと思います。
参考)ドバトの首の羽根が二色にしか見えない理由
http://www.yoshioka-lab.com/kaisetsu/pigeon.html
ハトの首はなぜ緑と紫だけなのか
https://www.chart.co.jp/subject/rika/scnet/29/sc29-1.pdf
このハトの研究は2007年頃に発表されていて,身近なことが意外と研究されていなかったのだということがわかります。私もこのような身近でなじみのある題材でわかっていないことを明らかにしたいと思います。

ドバトの構造色

反射防止膜による色付き

つぎは人工的な構造色について見ましょう。レンズには表面での光の反射を抑えるため「反射防止膜(ARコート:Anti-Refrection coating)」がつけられています。
参考文献)反射防止膜 https://www.jstage.jst.go.jp/article/sfj1970/32/8/32_8_421/_pdf
この反射防止膜によってレンズの表面に色が付いて見えます。例えば私が持っているカメラのレンズを見ると,緑色に見えます。メガネだと水色や緑色に見えます。写真に示した下側のメガネはかなり年季が入っていて,だいぶ反射防止膜がはがれているので,膜がないとそのように見えるのかわかりやすいと思います。

レンズの反射防止膜による構造色

下の写真は自衛隊のオープンベースに行った時に見た何かの装置の写真です。紫色に見えるレンズと黄色に見えるレンズが並んでいます。反射防止膜は,使っているレンズ材料や透過波長によっていろいろなものがありますので,このようにいろいろな色の反射防止膜があります。

自衛隊の装置の構造色

ヘッドアップディスプレイの反射膜による色付き

最後はオープンベースに行ったときに見た戦闘機のコックピットの写真です。コックピットには前方から視線をずらさずに各種メータの表示が確認できるようにヘッドアップディスプレイが備えられているようです。ガラスの表面に薄膜をつけて各種メータの情報を投影するので,写真に示すように薄膜による光の干渉により緑や紫色が見えました。戦闘機のヘッドアップディスプレイはなかなか見ることはできません。しかし,自動車でも使われている車種がありますので,興味のある方はそちらをご覧になるとよいかと思います。

戦闘機のヘッドアップディスプレイの構造色

まとめ

構造色というと,よく話題になるのがタマムシやクジャクかと思います。私自身がそのようなものの写真を撮る機会がなかなかないので,今回は紹介できませんでした。構造色について,いろいろ写真のコレクションが増えたら,また紹介させていただきたいと思います。

タイトルとURLをコピーしました