気象の世界では「背が高い」とか「背が低い」という言葉を使います。私が忘れられないのは,気象予報士試験で「シベリア高気圧の背が高い」に対し,正or誤を選ぶ問題です。私は間違えました。「シベリア高気圧の背は低い」のです。絶対に忘れません。
積乱雲も「背が高い」といいます。雲の一番下「雲底」から一番上「雲頂」までの距離が長いのです。対流圏の下層から上層まで達します。最初の写真は富士山山頂から見た発達中の積乱雲です。富士山の高さを超えていることがわかります。
本宮山で見かけた積乱雲
本宮山(標高789m)に登ったときに山頂から積乱雲が見えました。この日は上空の風が弱かったので,積乱雲は風に流されることなくほとんどその場に留まっていました。雲の下を見ると雨柱が見えます。雲底の高さは本宮山山頂より低いことがわかります。
線状降水帯とか規模の大きな積乱雲の場合は雲の全体像を見ることがなかなか難しいですが,このようにひとつの積乱雲だけが現れたときは,積乱雲を観察するチャンスです。
地上で日没後でも太陽があたっている
下の写真は夏の夕方(2021年8月1日)のものです。夕焼けで積乱雲がオレンジ色になっており,とてもきれいです。太陽のあたっていない雲の下半分には太陽光があたっていません。太陽光が地球によって遮られているためで,別の見方をすれば地球の影が映っているということもできます。
このように積乱雲に夕日があたると,その時の夕日の色や太陽との相対位置の関係で積乱雲の色も変わります。いつもワクワクしながらこれらの積乱雲を観察しています。
どのくらいの高さが測ってみると・・・
下の写真(2018年9月2日撮影)は豊橋付近に現れた積乱雲です。積乱雲の一番下から一番上まできれいに見ることができます。雲の下には雨柱があり,豊橋の街がその中に隠れています。積乱雲の雲頂にはかなとこ雲は出来ていないので,対流圏界面には達していないようです。
この積乱雲の位置を雨雲レーダで確認したら,見ているところから約15kmのところに降雨域の中心位置がありました。そこで,写真の情報と雨雲レーダで求めた観察者と雲との距離からエイヤーで積乱雲の高さを計算してみました。観察者から8.3kmのところに高さがわかっている御堂山があり,それが写真に写っているので,その情報を基準に計算しました。その結果,積乱雲の高さは8125mとなりました。エベレスト(チョモランマ)よりちょっと低い感じでした。
まとめ
積乱雲は背が高いといわれますが,エイヤーで積乱雲の高さを計算してみました。いろいろな本に雲の高さはどれくらいか書いてありますが,自分で計算してみると理解が深まるかと思います。この先も積乱雲についていろいろ考えたいと思います。