ヘリウムガスが入った風船を思い浮かべてみましょう。その風船をつかんだ手を離せば,風船は勢いよく空へ登っていきますよね。それでは,その風船がものすごく大きかったらどうですか? 風船の上にある空気は風船に押されて一緒に登っていきませんか? 風船に押されて上昇した空気は断熱膨張して温度が下がり雲ができる場合があります。
積乱雲ができる場合も同じことが起こります。積乱雲の上昇気流がその上にある空気を一緒に上昇させると雲ができることがります。それが頭巾雲とかベール雲と呼ばれるものです。今回は,そんな頭巾雲・ベール雲を見ていきましょう。
頭巾雲は短寿命
下の写真はブログの最初に示した積乱雲(2021年6月25日撮影)の雲頂部分を拡大して撮影したものです。モクモクした積乱雲の上に,もくもくしていない白い雲がかぶっています。頭の上に頭巾をかぶっているみたいということで「頭巾雲」です。
頭巾雲は短命で,すぐに消えてしまうことが多いため,写真を撮るときは,すかさず撮影することをお勧めします。下の8枚の写真(2017年8月20日撮影)は短命なことを説明するために頭巾雲の時間変化を示すものです。積乱雲が発達するときは雲がモクモクしていますが,最初の写真では頭巾雲をかぶってモクモクしたものが隠れて表面がのっぺりしています。そこから,頭巾雲が消えて新しい小さな頭巾雲が現れました(3枚目の写真)。ここまで時間にして1分ちょっとです。さらに2分半経過すると,その頭巾雲も消えてしまいました(6枚目の写真)。頭巾雲は発達中の積乱雲の上にできるので,このようにめまぐるしく様子が変化します。
いろいろな頭巾雲・ベール雲
頭巾雲もベール雲も積乱雲の上に乗っているものですが,「新・雲のカタログ [空がわかる全種分類図鑑]」(草思社)によれば以下のように説明されています。
頭巾雲:発達中の積雲の雲頂部に「ちょこん」と乗っている小さな薄い雲
ベール雲:頭巾雲が水平方向に大きく広がり,ひとつまたは複数の雲頂部に接して雲を広く覆うようになったもの
ここでは,いろいろな頭巾雲・ベール雲を見ていきましょう。
1枚目の写真(2019年5月11日 17時12分撮影)は夕方ですので,雲が少し橙色に色付いています。その積乱雲に頭巾をかぶっています。
2枚目は山登りのときに撮影したもので,積乱雲が自分と同じくらいの高さに見えています(2019年8月13日 11時21分撮影)。
3枚目は積乱雲の雲頂が1・2枚目に比べ広めです(2021年6月25日 15時02分撮影)。モクモクした雲の上にかぶっている様子がよくわかります。
4枚目は頭巾雲が2層になっていることがわかります(2021年10月19日 12時35分撮影)。
5枚目はベール雲です(2018年6月30日 11時49分撮影)。
まとめ
頭巾雲・ベール雲はいかがでしたか? これらの雲が出ているということは強い対流活動がある証拠です。特に頭巾雲は積乱雲の発達中によくみられるもので,これを見かけたときには上昇気流が生じていることを感じることができます。注意してみていないと見過ごしてしまうので,積乱雲を見たときにはよく観察してみるといいですよ。