最初の写真では水の流路に木のやぐらが組んであり,そこに氷が成長して芸術的な造形美を見せてくれています(2023年1月28日 本宮山山頂付近で撮影)。気温によって氷の成長が大きく違うので,冷え込んだときにはどのくらい氷が成長したか見に行くのが楽しみになります。今回はそんな氷が見せてくれる造形美を探しに行きましょう。
霜柱
ほんの20年位前までは,私が住んでいるところでも放射冷却で冷え込んだ朝には,庭に霜柱が普通にできていました。しかし,最近では冬になってもそれほど気温が下がらず,庭で霜柱に出会うことはほとんどなくなりました。
本宮山に登ると,標高は789mありますのでさすがに気温が低く,霜柱はかなりの確率で出会うことができます。下の写真は登山道脇の地面に霜柱が顔をのぞかせているところです(2022年1月30日撮影)。
白っぽいところをクローズアップして撮影したものが次の写真になります。白い細長い氷がたくさん地面にできていることがわかります。地面が冷やされると,地表面付近が0℃以下となり水が凍ることができますが,地表面に比べ地面の深い側の方が温度が高く,0℃以上となっており水は凍りません。地面でできた氷の根元側に地中から水が供給されて氷は成長していきます。
考えてみるとなかなか複雑な物理現象が起こっているということに気付きます。ネット情報では地中から地表に向かって水が移動するのは毛細管現象とか記載されていますが,少し考えるだけでも以下のような疑問が浮かびます。
- 水の移動の駆動力は何なのか?
- 霜柱は根元で成長するけど,できたものの結晶構造はどうなっているのか?
- 根元で結晶成長するとすると,半導体の単結晶成長も同じようなことをしているけど,霜柱から着想を得たような研究が過去にあったのか?
また,霜柱の表面に乗っている土は霜柱ができる前に比べ高いところに運ばれていますが,この土を高いところに持ち上げたエネルギは地面の中にある熱エネルギで,地表面と地中の温度差ができることで熱エネルギの流れができて,それが仕事に変換されたとか考えることができます。
氷の膨張
つぎは氷を見てみましょう。下の写真は本宮山登山道の途中にある水場です(2023年1月28日撮影)。石の桶に水が貯まっていますが,それが見事に凍結しています。水の凍結は外周部や水面から進行したと考えられますが,中心部に凍結が進むに従って,凍結による体積膨張により表面が押し上げられ,最初に張っていた水面の氷が割れて写真のような様相となったものと考えられます。昔だったら,この亀裂のでき方で占いをしていたかもしれません。
水のしぶきの造形
水の流れるところの周りを見てみましょう。水のしぶきにより下の写真のようにつららができています(2023年1月28日撮影)。
つららだけではありません。水のしぶきが小さなボールが集まったようなブドウの房のようなものもできています。ボールの集まったような形になるのはとても不思議です。
まとめ
液体の水が固体の水になるというのは簡単な物理現象のような気がしますが,土の中であったり,貯まった水であったり,流れた水の近くであったりと,それぞれが置かれる条件の違いでいろいろな顔を見せてくれます。考えてみると,なぜそのようなことが起こるのかうまく説明できないことの方が多く,自分の無知を思い知らされます。これからも,いろいろ観察しながら自分の気付きを見つけて考察していきたいと思います。