最近,愛知県の愛・地球博記念公園に行く機会がありました。愛・地球博のときは,夏の暑い日にたくさんの人でごった返す中で訪れたものです。その頃と雰囲気が全く変わってしまっていて驚きました。雰囲気が変わってしまった一番の原因はジブリ関係のいろいろがあって,それを目的に海外からも含めて多くの方が訪れているからだと思われます。
下の写真(2024年10月13日撮影)は門から入ってすぐのところにあるエレベータの建屋です。なにやらおとぎの国に来たような外観です。たくさんの方が利用していたので,私はここのエレベータではなく,この横にある階段とスロープを使いました。ぶら下がったバケツや三日月の飾りに趣があり,外から眺めるのが良い気がします。
サツキとメイの家
愛・地球博のときからサツキとメイの家はありました。しかし,当時も入場券を入手するのが大変で,行くことはありませんでした。今回,公園内を歩いていたら,ジブリのエリアに入らなくても,周りの散策路から眺められることを知りました。写真はその際に撮ったものです。
遠くから書斎をのぞくと,たくさんの本が積まれていて映画の世界が再現されています。サツキとメイの家で思い出されるのは「まっくろくろすけ」こと「ススワタリ」です。昔の家は,囲炉裏があったり,台所で薪をくべたり,薪でお風呂を沸かしたりと,木を燃やしてエネルギを得ていました。いまの言葉でいえば「バイオマス」を活用していました。しかし,その燃焼過程が不完全燃焼を伴うもので,煤が発生して家の中にこびりついたりしていました。また,薪を燃やす家には煙突があり,たまには煙突掃除が必要で,「煙突の中はこんなに真っ黒なんだ」と体感する機会も多くありました。この時代は,身近な見えるところにわかりやすい化学反応や物理現象がたくさんあり生活に密着していたので,体感として物理・化学の感覚を習得することができました。
最近のお風呂は電気の力を使って浴槽にたまった水を強制対流させるので,貯まった水を放置しておくと下に冷たい水,上に暖かい水というように分離することも,なかなか体験できなくなりました。
石炭の時代
薪をエネルギとして使っていた時代のつぎには石炭の時代がやってきました。同じ体積の薪と石炭を比較すると,石炭の方がたくさんのエネルギを得られます。石炭1立方メートルから得られるエネルギは薪の4.3倍になります。参考)https://www.hakko.co.jp/contest/report08/03_20141218.pdf
ですから,石炭の時代には蒸気機関を使って,薪の時代に比べより大きなパワーが得られるようになりました。下の写真は大井川鉄道で活躍する機関車トーマスの仲間たちです(2023年1月6日 千頭駅にて撮影)。円筒状の胴体の中には燃焼した石炭のエネルギで蒸気を発生させる熱交換器(ボイラー)が入っています。円筒状の後ろの方から石炭をどんどん供給して燃やし,熱くなった空気が円筒内を移動しつつ水をあたため,円筒の前方に設けた煙突から煙を噴き出します。煙突から噴き出される煙にはたくさんの煤が含まれているので煙は真っ黒です。
愛知こどもの国でも本物の蒸気機関車が走っています。とってもかわいい機関車ですが,下の写真(2023年1月7日撮影)に示すように本物の煙を吐き出しながら動いている様子を見ることができます。
蒸気機関車のしくみ
蒸気機関車のしくみを実物で確かめたければ,名古屋市の金城ふ頭にあるリニア鉄道館をお勧めします。2011年3月14日に開館しましたが,開館して数日後の3月18日に行きました。蒸気機関車C62の展示もありますが,注目すべきは蒸気機関車の胴体がカットされて中の構造かわかる「ケ90」です。
参考)https://museum.jr-central.co.jp/rolling-stock/
下の写真は「ケ90 蒸気機関車」で,私のわかる範囲でものの名前を記入してあります。昔の薪で沸かすお風呂だとパイプの中に水が通っていますが,蒸気機関車の場合はパイプの中を高温の石炭燃焼ガスが通ります。蒸気機関車の場合は液体の水ではなく,気体の水(水蒸気)が欲しいので,沸騰させた水から水蒸気を分離して取り出す機能もボイラには必要で,このような構造になっていると推定します。
まとめ
サツキとメイの家から「ススワタリ」を考え,そこから薪⇒石炭と連想し,蒸気機関車について考えました。昔のシステムは目で見てその構造や機能がとても分かりやすく,物理や化学のセンスを磨くにはとてもよい題材と思います。機会があれば是非いろいろ見ることをお勧めします。