以前,ブログの記事で「空気はなかなか混ざらない | ふわっとサイエンス」というトピックを紹介しました。そのときは,逆転層のお話をして,空気が層を作っているところを見ていただきました。今回は,層に分かれた空気は気温が違うものだということを観測されたデータで紹介します。
層に分かれた空気
下の写真(2024年7月23日撮影)は蒲郡から田原方面を撮影したものです。地上付近は透明な空気の層となっているのに対し,そのすぐ上に白い雲の層ができています。写真の右の方に白い支柱が見えますが,これはトヨタ自動車田原工場の風車で,支柱の高さは地面から85mです。雲の層と支柱の奥行方向の位置関係がわかりませんが,支柱の上に雲があるとすれば,透明な空気の層の厚さは支柱の2倍くらいの高さです。ですから,透明な空気の層はせいぜい200mくらいの厚さと考えられます。

このように空気の層ができているとき,「冷たい空気が下で,温かい空気が上にある」と考えられますが,「ほんとに?」と思われるかもしれまません。それがわかる現象を観測しましたので紹介します。
三河大島で見られた空気の層の変化
下の写真(2025年1月19日撮影)に写っている島は三河湾に浮かぶ三河大島です。約5分間隔で撮影したものを6枚並べました。最初の写真では山の頂上付近が白く見えるだけで,島のほとんどはクリアに見えています。時間が進むと白い空気の層がだんだん下がってきて,島のほとんどが白い空気の層に覆われました。三河大島の一番高いところは標高44mです。30分弱の間に40mくらいの厚さがあったクリアな空気の層が薄くなり,白い空気の層に入れ替わったことがわかります


今回の撮影地点は下の地図に示す場所です。三河大島の近くに三河湾の水温・気温・風速等を観測するブイ(1号ブイ,自動観測ブイ:愛知県水産試験場)があります。三河大島の空気が入れ替わった頃,このブイで観測された気温と風速を見てみましょう。

下の図に観測結果を示します。三河大島とブイの間に少し距離があるので,三河大島の現象とブイの測定結果が示す現象が時間的にぴったり合うということはありませんが,写真が撮られた13時頃に気温が上昇していることがわかります。クリアな空気の層より白い層の方が気温が高いということがわかります。

また,風速は1m/s前後でほとんど風がない状態でした。水温は深さ0.5mのところで6.5℃でした。温かい白い空気の層は13時30分頃には海面近くまで下りてきていますが,空気温度が8℃(15時の気温)だとすると,海面で空気が冷却される効果があるので,じわじわと気温が上昇したと考えられます。
まとめ
三河大島で可視化された空気の層と三河湾のブイで観測された気温の関係から,上側の空気の層は下側の層より気温が高いことを確認しました。この日は午前中は東三河沿岸部に弱い雨が降り,また風も凪いでいました。その関係で,空気の層が出来やすかったり,空気の入れ替えがゆっくりだったりしたため,条件が重なって現象の撮影と観測値の比較ができました。
前線の通過時にも気温が急激に変化します。アメダスの観測値を見ていて,気温が急変した場合にはどんなことが起こっているか想像するのも楽しいかもしれません。