東海道新幹線で静岡県を通過するとき,お茶畑を見る機会があると思います。しかし,時速300km近い速さで移動しているとじっくり見ることはないかもしれません。愛知県には西尾市に抹茶の産地があります。私は近くに住んでいるのでお茶畑には結構親しみがあります。今回はお茶畑で見かけた扇風機について考えてみましょう。
お茶畑
お茶の木をじっくり見たことはありますか? 下の写真(2025年1月25日撮影)は西尾の茶畑に行って撮影してきました。まだ1月なので新芽は出てきていませんが,よく見るとところどころ新芽の出る準備をしているところがあります。もう少し暖かくなると新芽が出てきて,おいしいお茶となります。

稲荷山茶園公園の近くで撮影したお茶畑の様子を示します。お茶畑には比較的背の高いポールの先に扇風機が付いたものが設置されています。これはいったい何でしょうか? 扇風機の取り付け角度を見ると斜め下の方向を向いています。扇風機が作動すると上の方の空気が地面の方に降りてくる流れができます。

お茶畑の扇風機
この扇風機の役割は遅霜対策です。春先のお茶の新芽が出る時期に放射冷却で地表面付近の温度が下がり,霜が降りるほど冷え込むときがあります。そのとき,何もしないと新芽が凍って細胞が破壊されてしまい,新芽が枯れてしまうことがあります。そこで扇風機の出番です。
放射冷却は地面の熱が宇宙に向かって放射により伝わるものです。放射により冷えた地面が,そこに接する空気を冷やします。冷えた空気は暖かい空気より密度が大きいので,風がないと冷えた空気が地表付近にとどまります。下の写真は,秋に放射冷却で霧が発生した様子です(2023年10月20日撮影,場所:幸田町相見)。白い霧の高さを見てください。電柱の高さより低いところにたまっていませんか。霧の空気は冷たく,その上にそれより暖かい空気が存在しています。

扇風機でその暖かい空気を地面に向かって送ってやれば地面付近の温度を上げることができ新芽の凍結を防止することができます。冬に放射冷却で気温が下がるのは風の弱い日で,風が吹いているときはそこまで朝の気温が下がりません。このメカニズムは扇風機で高いところにある暖かい空気を地表面付近に送るのと同じことです。
扇風機のいろいろ
扇風機をよく見てみましょう。2種類のものの写真を示します。翼の形が違い,メーカごとにいろいろ工夫をされているようです。メーカには以下のようなものがあります。
パナソニック:04.防霜ファンカタログ.pdf
ソーワテクニカ:防霜用パワーファン表面_1


まとめ
ドラマで「北の国から」というのがありました。田中邦衛さん演じる黒板五郎が北海道の富良野に住む物語です。そこで,農作物を育てているのですが,遅霜が来るということで関係者が総出で対策に駆け回る場面がありました。防霜ファンはありませんので,畑の周りでタイヤを燃やしていました。いまでは禁止されているのでやる人はいませんが・・・。
参考)農作物を凍霜害から守りましょう
いまでは扇風機があって環境にやさしく,センサを使って自動で運転開始できたりします。扇風機を使うことを考えた人は「すごいな」と思います。