寒い地方では冬になると軒先に「つらら」(氷柱)が見られます。 ドラマ「北の国から」では当時の熊谷美由紀さんが演じていた「つらら」さんが有名ですね。 下の写真は本宮山で撮影したつららです(2024年12月13日撮影)。「つらら」というと漢字でもわかるように,水が凍った氷でできたものを思い浮かべられることが一般的かと思います。

しかし,下に示す建物の軒先に注目ください。白いつららのようなものができているのがわかります。ここに見える一番長いつららのようなもののクローズアップがこのブログの一番最初に示した写真です。

コンクリートの「つらら」
近寄ってもう少し詳しく見てみましょう。つららのところの軒下には白っぽくなっており,そこから「つらら」が伸びているように見えます。

下の写真示す「つらら」の先端は折れているように見え,「つらら」の内側は空洞に見えます。

つららの正体は?
この白い「つらら」はコンクリートのところに出来ていることからわかるように,コンクリートの成分が関係しています。
コンクリートのところに雨が降ってきたときのことを考えてください。最初のうちは雨がコンクリートに吸われていませんか? コンクリートにはある程度の隙間があって,コンクリートの表面と内部の間で水が行き来できるようです。コンクリートには水に溶ける成分「Ca(OH)2」(水酸化カルシウム)があって,コンクリートに水が入ると水がその成分を溶かし,それがコンクリート表面に出てきます。
ホームセンターに行くと畑の酸性度を調整するための白い粉「消石灰」を売っています。小学校の理科の実験で,消石灰を水に溶かし石灰水を作ったことがありませんか? この石灰水に溶けているのが水酸化カルシウムです。理科の実験では石灰水に人間の息を吹き込んで白く濁るということをやります。これは,息に含まれた二酸化炭素(CO2)が水酸化カルシウムと反応し,水に溶けない炭酸カルシウム(CaCO3)に変化したことを見ています。
これと同じことがコンクリート表面に出てきた水でも起こり,空気中の二酸化炭素と水に溶けたコンクリートの成分である水酸化カルシウムが反応し,水に溶けない炭酸カルシウムとなります。水がぽたぽた落ちるところがあれば,炭酸カルシウムがつらら状に出来ます。
鍾乳洞でも石灰岩のつらら(鍾乳石)を見ることができますが,これも成分は炭酸カルシウムなのでコンクリートのつららと同じようなものです。ただし,鍾乳洞の方は炭酸カルシウムが水に溶けたり,析出したりのプロセスでできているので,でき方は少し違います。
参考)https://core.ac.uk/download/pdf/15920926.pdf
つららができなくても・・・
つららができなくても,コンクリート表面に炭酸カルシウムができたところを見ることができます。道路の盛り土の擁壁でコンクリートが白くなったり,水の流れた跡がついているところがあります。

白くなっているところに近付いてみてみましょう。比較のため,近くの歩行者用トンネルで雨のあたらないところの写真も掲載してあります。白いところは水が流れた跡に沿って分布しており,丸いくぼみの下側には白く析出したものが付いていることがわかります。

コンクリートの切れ目にも水が流れた跡に析出物があります。析出物は切れ目に設置された木の板の表面を覆っているところもあります。茶色の析出物は手で軽く触った程度では取れませんでした。

まとめ
炭酸カルシウムと言われてもよくわからない方がいるかと思います。しかし,これはとても身近なものです。例えば,卵の殻や貝がらです。生物はこの化合物を上手に利用して生きています。人間の生活でも歯磨きの研磨剤などいろいろなところで利用されているので,自分で調べてみると良いかもしれませんね。