春が近づくと梅の花が咲き,続いて桜の便りが聞かれるようになります。そのあと,梅の実がなって梅仕事の季節が来ます。毎年,私は梅ジュースを作ります。梅仕事の中にもサイエンスがあます。今回はそれについて考えます。
梅の水洗いで見られる現象
梅を買ってきたら水につけて洗います。水をつけたその瞬間,不思議なことに気付きます。梅の側面が白くなっており,水の容器の白が反射して梅の表面が見えていません。

もう少し近寄って見てみましょう。丸い梅の粒の側面に容器壁面の白色が反射して見えていて,ここは梅の表面が完全に見えません。容器壁面の反射はあるところを境に見えなくなり,見ている側に近い面では梅の表面が見えています。

この原因は梅の表面にあります。梅の表面には産毛(毛じ,モウジ)がたくさん生えていて水をはじきます。そのため,梅の表面に空気の薄い層ができます。すると,梅の表面から出た光は空気と水の境目を通って目に入ることになります。中学校のとき理科で「全反射」という言葉を習った記憶がある方もいらっしゃると思いますが,光と空気層の垂線のなす角が49°より大きくなると全反射が起こって梅の表面の光が目に届かず,容器壁面からの反射光しか見えなくなります。

目に近い側の梅は全反射が起こっていないので梅の表面が見え,下の図に示すような感じで見えます。

まとめ
身近なところにサイエンスがあります。私は,何か違和感を感じたら「なんでだろう」とか,「しらべてみよう」と思います。「知らなかった」とか「すごいな」と感じられたらこの上のない喜びになります。そんな喜びをこれからもたくさん感じたいと思います。