水面での反射

なんでも実験

「逆さ富士」という言葉をご存じでしょうか? 湖面が鏡のようになり,富士山が水面に映り逆さまに見えるものです。条件がそろわないとなかなか見ることができません。先日,宇治市にある平等院(10円玉の絵柄でおなじみ)を訪れた際,「逆さ富士」ならぬ「逆さ平等院」を見ることができました。今回は水面に映って見える風景について考えます。

水面に映る風景

下の2枚の写真(2025年3月31日撮影)に「逆さ平等院」を示します。平等院鳳凰堂の周りには阿字池という池があり,そこにきれいに鳳凰堂が映っています。3月の終わりで,きれいな桜も咲いています。

逆さ平等院
逆さ平等院と桜

以前立山に登ったとき,みくりが池に逆さ立山が映っていたのを思い出しました(2013年8月15日撮影)。このときも水面は鏡のようで,写真を逆さまにしても見ている方は気付かないのではというきれいさでした。

みくりが池に映った逆さ立山

それでは,このような風景はどのような条件がそろったときに見られるのかということをふわっと考えてみましょう。

水に映る条件

ひとつ目の条件は,水面が波立っていないことです。下の写真は海にいるアオサギを写したものです(2025年3月31日撮影)。アオサギの姿が水面に映っていますが,少し波立っているせいで,映っている姿は少し不鮮明になっています。より波立てば映っている姿はさらに不鮮明になってしまいます。

波立ちの原因はいろいろありますが,最も大きな要因は風です。風が凪いでいれば水面が波立つことはなく,鏡面のようになってきれいに光を反射します。
支笏湖では湖面が鏡のように風景を映し出す「鏡面現象」を観光資源化するため,公立千歳技術大学が気象情報をもとにその発生を8割弱の確率で予測できるソフトウェアを開発しています。
参考)支笏湖の鏡面現象 予測アプリ開発 千歳科技大の研究室 | 全国郷土紙連合

水面に映ったアオサギ

ふたつめの条件は水面で反射される光の方が水の中からくる光よりも強いことです。下の写真は池に産み付けられたカエルの卵を撮影したものです(2025年3月29日撮影)。水面に風景が映っていますが,写真の右側には空と木の枝が見えます。ここは池の中は見えません。それに対し,写真の中央付近にはひも状のヒキガエルの卵があることがわかります。ここは池の周りの木が映っているのですが,木は日陰になっており反射する光が空が反射するときより弱くなっています。相対的にヒキガエルの卵の光が強く,そちらが見えています。

池の中をのぞいた時の水面反射

平等院の池の場合は池の水が緑色をしており透明度が低いため,池の中からくる光が散乱されてしまい,相対的に水面で反射された光が強くなるので逆さ平等院がきれいに見えています。

お椀・茶碗での反射実験

水の底が黒っぽい色と白っぽい色で水面の反射の見え方を比較しました。容器にお椀と茶碗を使い,その中に水をいれてLED照明が反射したところを見ました。黒い底では水の中から余分な光が来ないので水面で反射されたLED照明がくっきり見えています。これに対し,白っぽい茶碗では茶碗の底がはっきり見えており,そこにLED照明の反射が重なっています。茶碗の底の像とLED照明の像が重なって,お椀のときに比べLED照明がくっきりとはなっていません。

水の底が黒と白のときの水面反射の見え方

水の色を変えて実験してもよいです。墨汁で黒くしたり,絵の具で色を付けたりして反射の見え方を比較してみましょう。

まとめ

平等院や立山で見た水面の反射からきれいに水面反射の像が見える条件に付いて考えました。波の有無が大きな要因ですが,水の中からの光も関係していました。

なお,平等院が池にきれいに映って「逆さ平等院」となっていたものは,一羽のウがやってきて波立てることで見えなくなってしまいました。

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