最近,カエルの卵を観察しています。そのときに水面を見るとアメンボが水面の上を滑らかに動いている様子が見られます。今回はアメンボを観察し,そこから宇宙のことを考えたので報告します。
アメンボが浮くということ
一番最初に示した写真ではアメンボが1匹,水面に浮かんでいる様子を示しました。しかし,下の写真では,よく見ると2匹のアメンボが仲良くくっついて浮かんでいます。アメンボは昆虫で,足は6本あります。前足・中足・後足がそれぞれ2本ずつです。下のアメンボは6本すべての足を水面につけ,沈まないように懸命に踏ん張っています。これに対し,上のアメンボは前足で下のアメンボにつかまり,中足はぶらっとさせて宙を浮き,後足は水面についていますが水面の湾曲具合から体重はほとんどかかっていないことがわかります。すなわち,下のアメンボの足にほぼ2匹分のアメンボの体重がかかり,それでも沈まないということがわかります。

アメンボが浮く理由はいろいろなところで解説されています。足に脂分が付いて水との濡れ性が悪く,水の表面張力が働いているというものです。表面張力で浮くというとアルミニウム製の1円玉が水に浮くという実験が有名です(下の写真)。
参考)1円玉はなぜ水に浮かぶのか
1円玉の浮いている写真を見ると,1円玉の縁にくっついた水表面の膜に引っ張られているように見えます。また,1円玉の底面は水面より下側にあるので,底面には水面と底面の高低差分の水圧が掛かることもわかります。これも1円玉が浮く力として作用します。

アメンボが浮いている写真を見ると,アメンボの足が踏ん張っているところでは水面が湾曲し,足裏の高さは水面より下側にあることがわかります。足裏には水面と足裏の高低差分の水圧が作用し,表面張力に加えこの水圧もアメンボが浮くのに貢献しています。
アメンボが水面に及ぼす影響の可視化
アメンボが水面に浮かんでいると水が湾曲している様子が見られました。そのため,カメラの焦点を水の底に合わせて写真を撮ると下の写真のようにアメンボの周りの像が歪んで見えます。水面がどのくらいの広さで湾曲しているのかわかります。

水底を見ると,アメンボ付近の水面が湾曲することで光が屈折し,その付近だけ暗くなっている様子が見られます。

これらの現象は,アメンボが水面の形状に影響を及ぼし,それが光の屈折により可視化されたものです。この現象を見たとき,私は宇宙を連想しました。
宇宙の中でその存在を可視化する
宇宙の中ではその存在を予言されていても,実際にあることを証明することが難しいものがあります。たとえば,明るい恒星の近くにある暗い惑星は,恒星のまぶしい光に隠されて見つけるのが非常に難しいです。ですから,アメンボが水面に影響を及ぼし,それが光の屈折に影響してアメンボの存在を可視化したように,惑星が恒星の光に影響を及ぼし惑星の存在を可視化する方法がとられます。
アメンボの場合は水による光の屈折でしたが,宇宙の場合は重力による光の曲がりです。恒星の周りにある重力場で光が曲げられるということは,それが光のレンズのように働き,その恒星の後ろ側に別の恒星があった場合にレンズ効果で光が集められ明るく見える場合があるということです。恒星は宇宙空間で動いているので,恒星と恒星の相対位置は変化し,明るく見える度合いが変化します。レンズ効果を発揮する恒星に何もなければ,恒星の動きに応じて明るさは増えて減るだけです。しかし,惑星があり重力場が歪んでいると明るさが急激に変化するタイミングができます。この現象を利用したのが重力マイクロレンズ法です。
参考)重力マイクロレンズ法 | 天文学辞典
系外惑星「遠い世界の物語」その5
これまで,恒星のたくさん集まった銀河の重力によるレンズ効果を重力レンズと呼んでいました。これに対し個々の恒星によるレンズ効果を銀河のものと区別するためにマイクロレンズ効果と呼んでいます。
まとめ
アメンボが水面に浮かぶことによる水面の変化から,宇宙の惑星を見つけることを連想しました。昔,中学校の理科でブラウン運動というのがありました。分子の振動をほかの見える粒子で間接的に可視化するというものです。これも,見えないものを何とかして可視化するというものです、いろいろなことを明らかにするため様々な工夫がされてきました。現象を見て,先人の知恵を感じるのも楽しいです。