自分で溶けてなくなる「ササクレヒトヨタケ」

ササクレヒトヨタケ あれこれ

メンタルが疲れているとき,「自分が溶けてなくなっちゃいたい」と思ったことはありませんか? 人間の場合,それはなかなか難しいことです。しかし,キノコの場合はそれを実行するものがいます。ササクレヒトヨタケです。「ヒトヨ(一夜)」と名前に付いていますが,キノコが成熟すると傘の部分が短期間の間に溶けてしまうことからこの名前が付きました。ネットには溶ける様子をタイムラプス動画で撮影されたものが紹介されています。一度見てみるとどんな感じで溶けるのか理解できるかと思います。ただ,タイムラプス動画では時間スケールが入っていないので,一夜で溶けるかどうかはわかりません。しかし,下記記事では日ごとに撮影された写真が掲載されており,1日でだいぶ溶けることは確認できます。
参考)三重県|林業研究所:こけしのようなきのこ、ササクレヒトヨタケの野外簡易施設における栽培技術の開発

昨年の秋に本宮山の林道わきでササクレヒトヨタケを見つけました。先日も同じようなところで生えているのを発見しました。秋や春に生えてくるみたいです。今回は,それらを紹介します。

ササクレヒトヨタケ

最初の2枚の写真は昨年の秋(2024年10月20日)に撮影したもの,あとのものは先日(2025年6月1日)撮影したものです。最初の写真に写っているものを見たとき,「真っ白でなんと美しいものなのだ!」と感じました。そして,その近くに生えていた2枚目の写真のモノとは別物だと思いました。しかし,調べてみると真っ白なものが成熟すると,自分が出す消化酵素の働きで傘の部分がどんどん溶けてしまうことがわかりました。溶けるときに真っ黒になります。

本宮山で見つけたササクレヒトヨタケ

2枚目の写真には6本のササクレヒトヨタケが写っていますが,それぞれの溶ける段階が異なるため,どのように溶けるのが進むのかわかりやすいです。傘の下の方から溶けるのが進行し,傘がだんだん小さくなっていきます。柄の部分は溶けないようです。また,柄のところに黒い液が垂れたような跡が付いています。黒いものは地面に落ち,地面が黒くなっています。

溶けだしたササクレヒトヨダケ

溶けている途中のササクレヒトヨタケの表と裏

真っ白だったものが黒くなっていますが,その途中の傘を詳しく見てみましょう(下の写真)。傘の外には白い繊維状のものがあります。傘の内側を下側からのぞき込むと真っ黒なことがわかります。消化酵素がどこから分泌されて,どのような溶け方をしていくのか。また,それはなぜそのようになっているのか知りたいことがたくさん出てきます。この先,もう少し調べたくなりました。

溶けている途中のササクレヒトヨダケの表と裏

なかには,妖怪の「からかさ小僧」(からかさ小僧 – Wikipedia)のような溶け方をするモノもいます。傘の途中に穴があいて目のようなものができています。自然の造形美ですね。

からかさ小僧のようなササクレヒトヨタケ

まとめ

今回は自分で自分の体(傘)を溶かしてしまうササクレヒトヨタケを紹介しました。そういえば,人間も自分の体を溶かしてしまうことはありました。膵臓が病気になって,消化酵素を含む膵液が体に漏れ出すと,自分自身の内臓を消化して溶かしてしまいます。なかなか厄介な病気で,こんなことで苦しみたくはないですね。ササクレヒトヨタケは成熟すると溶けてしまいましたが,皆さんはいつまでも健康でお過ごしください。

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