虹色に光る傷・スクラッチ

自動車のシフトレバーで見つけた虹色の筋 あれこれ

ある晴れた日,自動車の運転席に座りシフトレバーに目をやるときれいな虹色を発見しました。今回は虹色に光る傷について見てみましょう。

自動車のシフトレバー近くで見つけた虹色

シフトレバーは運転モードを変えるもので,ドライブの「D」とか,エンジンブレーキの利く「B」などの文字がレバーの根元に書いてあります。その文字のところは透明な樹脂板がはめ込まれており,樹脂板に太陽の光が当たり,赤・黄・橙・青などの虹の構成色が筋で見えています。「B」の字のところの色の筋を見ると,色の筋は文字の手前にあることから樹脂板の表面に筋ができていることがわかります。

虹色の筋

透明板のところは背景が黒なので色の筋がわかりやすかったです。さらに,その周りの少し水色の樹脂板をよく見ると,少しわかりにくいですが,ここにも色の筋が見えることがわかります。

別のところで見つけた虹色の筋

この色の筋は何なのでしょうか?

金属表面にできた虹色

金属表面を見ると,色の筋の正体がわかりやすいのでステンレス板に見えた色の筋を紹介します。まずは,台所にあるステンレス製ボールの表面に太陽光をあてて見てみましょう。ステンレスの表面には擦ってできた筋状の傷(スクラッチ)がたくさんできています。光が当たると光を反射する筋状の傷が光って見えます。その中に色のついた光の筋が見えます。

ステンレスボールで見つけた虹色の筋

ステンレス製のスプーンも見てみましょう。ステンレスボールと同じように筋状の傷が光って見えます。

ステンレス製スプーンで見つけた虹色の筋

これを拡大して見ると,いろいろな色に光る筋が見えます。

スプーンの拡大

色の筋は擦れてできた筋状の傷に光が当たってできたものなのです。シフトレバー周りの樹脂板の表面にある擦れてできた筋状の傷は,おそらく土や砂などのかたいものが車外から持ち込まれ,それらがある状態で表面を拭いたことでできた傷と考えられます。

色の筋が見える理由

筋状の傷が等間隔で規則的についていればDVDやコンパクトディスクと同じようなものとみなすことができます。これらは光の回折格子として働き,光の干渉により特定の色が強められると色付いた光が見られます。

虹色に輝くDVD

これに対し,擦れてできた筋状の傷はDVDの筋に比べバラバラではあるものの,色のつく原理は同じであり,局所的な光の回折や干渉により傷はいろいろな色に色付いて見えています。文献では計算でこの光の筋を再現することもやられており,インターネットでその計算結果を見ることができます。
参考)ボン大学ら、金属やガラスなどのスクラッチ(かすり傷、引っかき傷)をシミュレートする波動光学モデルを論文にて発表 | Seamless

まとめ

生活の中にはいろいろな物理現象があふれています。今回のように思わぬところできれいな現象を見つけると,とてもうれしくなります。いままでいろいろな虹色を見つけてきましたが,もっと見つけていきたいと思います。

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