2025年9月8日の未明から明け方にかけて皆既月食がありました。これまで,2021年11月19日のターコイズフリンジが話題になった月食や,2022年11月8日の天王星食が話題になった月食で観測経験を積み重ね,少しずつ観測のコツやデータ整理の仕方の腕を上げてきました。今回は月食の終わる頃の月の高度が低くなるということで,西の空が開けている西浦温泉に観測に出かけました。撮影機材はコンパクトデジカメのSX740hsです。光学40倍で撮影しました。
月は地球の影の中を動いている
この記事の一番最初に示した写真は,月食のはじめから終わりまでの月の写真を合成したものです。赤い丸で示したところが地球の影で,その中を月が移動していきます。
見えている月が空の中で動いていることを感じたことがある方は少ないと思います。そこで,月の動きを写真で示しました。月が欠けてくると月の周りが暗くなり,写真に空の星が写りこみ始めます。それらの星は月に比べて十分遠くにあるため,いま扱っている時間スケールにおいてはその動きは地球の自転によるものとなります。空全体の星が空という天井にくっついていて,天井が地球の自転により動いているイメージですね。そこで,写真で見えている星を基準に月の位置を見れば月が星とは違う動きをしていることを感じることができます。
下の写真がそれをまとめたものです。10分間隔で撮影した写真について,月の近くに見えている星の位置を同じにして並べたものです。時間が経つにつれ,月が星に近付いていることがわかります。また,月に太陽の光が当たっているところや,地球の影の中の明るさの分布もなんとなくわかります。

ターコイズフリンジ
2021年の月食ではターコイズフリンジが話題になりました。ターコイズフリンジは地球の大気にあるオゾン層を太陽光が通過するときに赤い光が吸収され青い光が通過して月面に届いて形成されると説明されています。
参考)ブラッドムーンを横切る青い帯 オゾン層が作り出す「ターコイズフリンジ」|Infoseekニュース
赤銅色になった月の縁のところが青っぽく見えるものです。今回撮影した写真でもターコイズフリンジが見られました。下の写真の月において,下部に太陽光が当たって白く,上部は地球の影に入って赤銅色に写っています。その間に青っぽいところがあり,これがターコイズフリンジです。

月食前後の月の比較
月食のついでに月の見え方の違いについて考えましょう。下の写真は,月食開始前(写真左側)と終了後(右側)の月の写真を並べたものです。今回,月食終了時の月の高度が低かったので,月の見え方に変化があります。
- 色が違います。月の高度が高い月食前は白っぽいですが,終了後は高度が低く,少し黄色っぽくなっています。夕日と同じで,大気により青色の光が散乱された影響です
- 月の形はどうですか? 月食前はほぼ円形ですが,月食後は少し楕円(上下がつぶれている)になっています。これは大気の屈折の影響で,朝日や夕日が楕円に見えるのと同じ原理です。
参考)大気により変わる太陽の見え方 | ふわっとサイエンス

まとめ
今回の月食は天候に恵まれ雲一つなく,大変良い観測ができました。次回の月食は2026年3月3日です。次回も天気が良いことを祈っています。