2025年11月4日,本宮山山頂付近で飛行機雲彩雲らしきものを撮影しました。太陽と飛行機雲の間がかなり離れており,彩雲が見られる条件か疑問に思ったので,いろいろなデータを使って太陽と飛行機雲の方向のなす角度を計算しました。その結果,飛行機雲彩雲の見られた位置は内暈の出る位置とほぼ一致していることがわかりました。ただし,彩雲の色の並びから,内暈ではなく彩雲であり,位置がたまたま内暈のところに一致したものと考えました。
飛行機雲彩雲と太陽の相対位置
下の写真(2025年11月4日 9時49分52秒撮影)は今回見られた飛行機雲彩雲です。

飛行機の位置は,下の写真(9時49分10秒撮影で飛行機の来る少し前のもの)に示す赤四角のところにありました。飛行機雲下方に写っている特徴的な雲の形からわかります。太陽はこれよりだいぶ上の方にあり,彩雲が見られるにしては少し離れすぎている感じがしました。そこで,飛行機雲と太陽の相対位置を詳しく解析しました。

観測地点は地図から緯度・経度・標高がわかります。また,該当する飛行機についてはフライトデータ24で検索し,見えている方向や進む方向から容易に同定することができました。太陽の高度・方位は時刻と観測地点からわかります。

観測地点と飛行機の位置および高度差から,飛行機が見えているのが水平方向から何度の高さにあるか計算でき,その角度は12.7°でした。太陽高度は34°なので,太陽と飛行機の方向のなす角は21.3°となります。約22°ですが,この角度は内暈が見られる角度とほぼ同じです。内暈の可能性はないのでしょうか?

見えている虹色は彩雲なのか?
もう少し飛行機雲の写真を見てみましょう。
下の写真は9時49分59秒(前の飛行機雲の写真から7秒後)のものです。

さらに,9時50分04秒(さらに5秒後)のものです。この写真の左側の雲も色付いています。

雲の色付きを強調するために画像処理(ガンマ=0.5に変更)しました。内暈であれば太陽側(写真上側)が赤っぽくなりますが,写真上側が緑っぽく,下側が赤・黄になっています。このことから,内暈ではなく彩雲であると考えられます。また,飛行機雲の色も内暈の色の並びとは異なるので,光の回折で現れた彩雲と判断しました。今回はたまたま内暈が見られる位置であっただけだと考えられます。

飛行機雲の構造
飛行機雲の構造を見ましょう。飛行機雲の一番下側には白色の濃い部分があり,これはエンジンの排気に含まれる水蒸気が凝縮してできた雲です。また,主翼の下流側すぐのところから雲が発生しています。これは主翼の上面で空気が減圧されて温度が下がり,空気中の水分が凝縮したものです。主にこの部分の雲が色付いて見えています。

まとめ
彩雲の見られる位置について,Wikipediaによれば「太陽(または月)からの天空上での見かけの大きさ(視角度)が 10度以内に現れるものが多いが、20度 – 30度以内に現れることもある」といわれています。わたしはこれまで10°以内ということを思っていたので,今回のような検証をしてみました。今回の検証で飛行機雲の見える方向を特定できるようになったので,ほかに適用できような場面がないか考えていきたいと思います。
