11月,秋の終わりが近づいてきましたが,水辺でヒメアカネが楽しそうに飛んでいました。ヒメアカネの成虫は冬になると死んでしまいますが,交尾と産卵をして次の世代に命をつないでいきます。産み付けられた卵は冬を越し,温かくなってきたら孵化して成長していきます。今回は,ヒメアカネの交尾について見てみましょう。(写真の撮影日2025年11月26日,場所:本宮山)
最初に示した写真は,交尾中のヒメアカネです。赤い方がオス,茶色っぽい方がメスです。2匹が連結していますが,その形は「ハートマーク」に見えます。メイクラブの瞬間がハートマークになるというのは,人間の感覚からするととてもロマンチックに感じます。
この形で大事なことは,オスとメスの翅が同じ方向を向き,2匹同時に羽ばたいたときにこの体制で飛ぶことができるということだと思います。連結して飛んでいるところを見ると,そのアクロバティックな飛行に感動します。
ハートのしくみ
それでは,ハートがどのように形成されているのか連結部分を詳しく見ましょう。
まずは,オスがメスの首根っこを押さえているように見える部分です。オスが腹の先をJの字にしメスの眼の間に引っかけています。とんぼの種類によっては腹の先のはさみみたいなものでメスの首を挟むものもあるようですが,この場合は引っかけているだけに見えます。引っかけているだけなので,メスが脚でオスをきっちりつかんでおくことが大事なように思います。

つぎに,オスの腹の付け根のあたりです。メスの腹の先端部分をオスの腹の付け根に差し込んでいます。ここは,オスの精子が貯められた「貯精嚢」というところで,ここにメスの生殖器を入れて交尾が行われます。オスの精子は腹の先端から出るのですが,腹の先端から出た精子をあらかじめ貯精嚢に貯めておきます。

ハートのあとに
交尾中から交尾の後の行動はとんぼの種類によっていろいろあるようですが,今回観察したヒメアカネは連結が解かれたあと,オスとメスがしばらく近くで留まっていました。

その後,メスは1匹で池の泥のところに産卵をしました。

後日(2025年11月30日),さらに産卵の様子を詳しく見ました。メスが腹の先端を水に付ける合間にホバリングをします。その様子をビデオ撮影し,腹の先端を注視しているとホバリングしている間にそこへ卵を準備している様子がわかります。産み付ける卵はホバリング中に腹先端に装てんしていたのです。その後,とんぼは急降下して腹部を水中につけ産卵しました。

まとめ
冬が近くなったので,池の周りの蜘蛛の巣はすっかりなくなっています。天敵が少なくなってきた中でヒメアカネが一生の最後を謳歌していました。春になって新たな命が生まれるのを楽しみにしています。



