ある日の蒲郡での逆転層

蒲郡に現れた逆転層 なんでも実験

冬が近づき朝の冷え込みが厳しくなってきました。風が弱く放射冷却で冷やされた空気が地表付近に貯まる日は特に寒さを感じます。このとき,地表付近の温度は上の方の空気の温度より低く,「逆転層(接地逆転層)」と呼ばれる空気の層ができます。冷たい空気は暖かい空気より密度が大きいので,このようなことが起こります。

逆転層ができているとき,下の空気層に浮遊物があり白く見えることがあります。最初に示した写真(2025年12月8日撮影)がそれで,白い空気層の厚さと山の高さを比較すると空気層の境目(逆転層の上端)の高さは100mより少し低いところにありそうでした。そこで,山沿いを自動車で走行して空気の鉛直方向の温度分布を測定することにしました。

逆転層の温度分布を測定

本来なら,分解能0.1℃で位置情報も記録できる計測器が欲しいところです。しかし,とりあえずということで自動車の外気温センサ(分解能1℃)を使い,測定場所は手書きのメモで記録しました。標高はメモの情報をもとに地図から読み取りました。

蒲郡には山の中腹に23号線蒲郡バイパスが通っているので,その蒲郡西ICから蒲郡ICを走り,そこからオレンジロードに出て蒲郡市街地へ向かいました。時間は日の出直前で,日射の影響は受けていません。

下の図はその結果です。蒲郡バイパス走行時には温度が10℃ありましたが,オレンジロードを走って標高が下がると温度はどんどん下がっていきました。蒲郡市街地と蒲郡バイパスでは3℃の温度差がありました。逆転層の上端は写真で見たもの(100mより少しひくいところ)とほぼあっていました。

逆転層の温度分布測定結果

蒲郡アメダスの観測値

この時のアメダス蒲郡の観測結果を見てみましょう。アメダス蒲郡の設置場所は,23号線蒲郡バイパス蒲郡西ICの近くにあり,標高は55mです。この高さが絶妙で,今回見た逆転層くらいの厚さのときに面白い観測結果が得られます。

下の図は私が逆転層の温度分布を測定した日のアメダスの測定結果です。アメダス蒲郡で温度の測定値が5℃くらい急激に変化しています。参考として隣町にあるアメダス豊橋ではこのようなことは起きていません。アメダス蒲郡の北側には遠望峰山があり,山から吹き下ろす北風のときに11~12℃の高温となっています。ここでは逆転層の上にある空気層の温度を測定しています。これに対し,風が東風になると下の層の空気が流れてきて温度が低くなります。

ちなみに,蒲郡ではアメダスのほかに蒲郡消防署での気象観測結果が公表されています。蒲郡消防署は市街地に近いところにあります。ここで測定されたこの日の最低気温は5.9℃でした。6時~7時頃のアメダスの温度6.4℃はこれに近く,この時間帯にはアメダスは逆転層にある空気の温度を測っていたことがわかります。

アメダス蒲郡の観測結果(2025年12月8日)

参考までに12月7日のアメダス観測値も示します。この日も逆転層ができていました。アメダス蒲郡では逆転層の上の層の空気温度を測るタイミングと,逆転層の空気温度を測るタイミングがあり,温度が5℃程度急激に変化する場合がありました。上層の空気温を測っているのはやはり山から吹き下ろす北風のときでした。

アメダス蒲郡の観測結果(2025年12月7日)

まとめ

最初に逆転層の温度差に興味を持ったのは,早朝に家から本宮山へ行くために23号線蒲郡バイパスを走ったときでした。家を出るときの気温が5℃くらいだったのが,バイパスへ行ったら10℃になり,5℃も高かったことにびっくりしたからです。今回のアメダスのデータからも逆転層とその上の空気で5℃くらい温度差があることを確認できました。

これだけ温度差があれば,上位蜃気楼が見えてもおかしくありません。南極基地での上位蜃気楼は同じような逆転層で観測されているからです。
参考)蜃気楼が見えました – 観測隊ブログ

今後,同じような逆転層が現れたとき,観測する高さや対象物を工夫してなんとか上位蜃気楼の観測につなげたいと思います。

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