今回はきれいに色付いた雲「彩雲」について見てみましょう。太陽の周りにあれば光環と呼ばれます。彩雲と光環は同じ原理で色が付いて見え,それは光の「回折」によるものです。光の回折というのが,なかなかなじみがなく,同じ「折」という字が付いている「屈折」と勘違いされる方が見えますが,両者は違うものです。高校の物理で「回折格子」というものを習ったことを覚えている方は見えますか。回折はその回折です。光が雲粒にあたると,雲粒の影になる側に光が回り込んで曲げられるのが回折です。回折すると,見ている人に伝わってくる光の経路が雲粒ごとに変わるため,それぞれの光が干渉して色が見えます。
上の写真は上高地から焼岳に登る途中に撮影した彩雲です(2019年8月13日撮影)。私がいままでに見た中でいちばんきれいに見えた彩雲です。色の付き方が大変見事でした。それでは,他の彩雲もいろいろ見ていきましょう。
彩雲
ネットや本に出ている彩雲の写真は,きれいに色を出すためにどうみても画像処理(色調補正)しているのではないかと思うようなものが結構あります。画像処理をするとどんな感じで見え方が変わるか一例を示します。下の写真はコンパクトカメラで撮影したままのののです(2024年1月28日撮影)。見え方も大体こんな感じでした。比較的きれいに色付いています。これを私なりに画像処理したものがその下の写真です。コントラストや明るさなどを調整し色を濃く見せています。だいぶ色付きの見え方が変わりました。写真としてはきれいですが,公開するには画像処理したことを注釈で入れておかないと,皆さんが,「彩雲はこんなに色が濃く見えるのだな」と誤解のもとになるので注意が必要だと思います。
これから示す写真はすべて画像処理していません。
下の写真は雲の縁の色が比較的濃い目に出ています。雲の縁では,雲粒から水分が蒸発することで,雲粒が小さくなり,きれいに色が分かれやすくなります。
積乱雲の上端に見えた彩雲
次に示す彩雲は積乱雲の上端に見えたものです。下の写真の灰色部分は積乱雲の厚い雲の部分です。その雲の向こう側に太陽が隠れています。積乱雲はいままさに発達中で,上に向かってどんどん上昇しています。その上昇気流に押されて周りの空気も上昇し,断熱膨張による温度低下が起こります。そのため,そこに含まれた水分が凝縮して薄い雲(頭巾雲やベール雲)が生まれます。その薄い雲のところにきれいな彩雲が見られます。とてもきれいに色付いています。
太陽の周りの彩雲・光環
太陽の周りに出る彩雲・光環について写真を4枚示します。同じ彩雲・光環といっても,雲の様子によってその色の付き方はいろいろです。何も考えず,写真をお楽しみください。
どこでも出会える彩雲
あなたはメガネをかけていらっしゃいますか? メガネをかけていれば,冬の朝や夜に簡単に光環に会えます。レンズに息を吹きかけて曇らせてみてください。その状態で街灯など明かりを見ると,その明かりの周りが赤っぽく色付いて見えるはずです。まさしくそれが光環です。冬の朝の通勤時,私はまだ暗いうちにうちを出ます。駅から電車に乗っていきますが,その駅で電車を待つ間,レンズの曇りを通して見たLEDの街灯に光環が出るのを見て,今日も一日頑張ろうと思います。きれいな彩雲を見て,元気を出し,幸せを呼び込みましょう。