名古屋地方気象台に行ってきました

あれこれ

2024年8月3日(土)には名古屋地方気象台で「お天気フェア」がありました。お天気フェアでは,一般の方々が気象台の中を見学したり,楽しい実験を体験することができました。気象関係の端くれである私も気象台を見学してきました。これまで,岐阜気象台には行ったことがありましたが,名古屋地方気象台は初の訪問になります。地下鉄の本山駅からワクワクしながら気象台のある日和山の坂を登っていきました。それでは,気象台の中を覗いてみましょう。

桜の標本木

まずは超有名な桜の標本木を紹介します(下の写真)。夏ですので桜の木は青々としています。屋外の観測設備がある露場と呼ばれる芝生エリアの横に植わっています。幹には「観測用標本No.4 そめいよしの」という看板がかかっています。春になるとニュースで注目される木も,いまはひっそりとたたずんでいます。

さくらの標本木

露場

つぎは露場(ろじょう)を見ましょう。芝生が植えられ,大変広々としています。芝生が植えられているのは地面から観測装置に与える熱の影響を抑えるためです。また,これだけ広ければ,周囲の人工物の影響もかなり抑えられるでしょう。

露場

露場には以下に示すような観測装置があります。おなじみなのは温度計・湿度計でしょう。温度計・湿度計は通風筒と呼ばれるものの中に入っており,通風筒の中は常に空気の流れがあります。温度や湿度の測定は意外と難しいです。以前,エアコンの実験をやっていたことがあるのですが,できるだけ正確に測るということによく悩まされたものでした。
つぎにおなじみなのは雨量計です。雨量計の構成がわかるように,中が見えるような展示もあったのであわせて紹介します。雨量計の中にはシーソーみたいなものがあり,雨量0.5mmごとにシーソーみたいな転倒ますが動くようになっています。このように雨量は0.5mm刻みでしか測れないので,それより少ない雨量の雨が降ってもわかりません。そのため,雨が少しでも降ったかどうかわかるように感雨器があります。感雨器には電圧をかけた2本の電線が貼り付けてあり,水滴が2本の電線をまたいで付着すると電気が流れて雨が降っていることがわかります。純水には電流は流れませんが,雨にはいろいろなものが溶け込んでいるので電流が流れます。あとは積雪計,視程計,黒球温度計があります。黒球温度は,最近よく聞く暑さ指数(WBGT)の計算に使われます。
参考)地上気象観測 https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/chijyou/surf.html
   感雨器のしくみ https://www.data.jma.go.jp/sendai/knowledge/sokki/detail_sokki5.html

露場の計測器
雨量計の構造

屋外の観測器(露場以外)

屋外の隅にはウィンドプロファイラがあります。ウィンドプロファイラは地上から上空に向けて電波を発射し,散乱されて戻ってくる電波を受信して,上空の風向・風速を測定するものです。
参考)ウィンドプロファイラ https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/windpro/kaisetsu.html
気象予報士試験ではおなじみのもので,この観測データを理解することは気象予報士になるための第1歩です。

ウィンドプロファイラ

ウィンドプロファイラの近くには電子基準点があります。私は富士山に登ったときにも電子基準点を見つけましたが,富士山のものとはだいぶ外見が違います。
参考)電子基準点とは https://www.gsi.go.jp/denshi/denshi_about_GEONET-CORS.html

電子基準点

屋上の計測器と眺望

屋上に出てみましょう。高いところには風向風速計があります。建物は丘の上にあり,その屋上ですから風を遮るものはなく全方向からの風を受けることができます。他には全天日射計,日照計も見えます。これらのケーブルのところにインシュロックで作ったとげとげがありますが,これらは鳥よけだと思います。露場にあった黒球温度計にもとげとげがありました。配線のプロが見たら「インシュロックの飛び出たところはニッパーで切りなさいと」怒られそうですが,目的があるのでこれはこれでよいのです。
参考)全天日射計・日射計のしくみ
 https://www.metsoc.jp/default/wp-content/uploads/2014/11/Kawamura.pdf

風向風速計と全天日射計,日照計

つぎは気象レーダです。ドームの中にはパラボラアンテナが収納され,くるくる回っています。この日も稼働しているので,レーダドームの入口からのぞくだけです。レーダは二重偏波気象ドップラーレーダで,使われている電波は水平方向と垂直方向に振動する電波(それぞれ,水平偏波,垂直偏波といいます)からなる二重偏波です。周波数は5.36GHz(Cバンド)です。

気象レーダ

屋上からは素晴らしい長めです。ナゴヤドームの大屋根やキノコのような形をした東山給水塔が見えます。

名古屋地方気象台からの眺望

震度計

最後は展示されていた震度計の中身を見ましょう。地震の揺れの3軸(東西・南北・上下方向)方向の成分を測定するため3つの加速度センサが付いています。会社の実験でもっと高い周波数をはかる加速度センサは見たことがあるのですが,地震の振動数に対応したセンサを見たのは初めてで大変参考になりました。

震度計の構成

まとめ

お天気フェアにはたくさんの方が訪れていました。毎年同じ時期に開催されているようなので,是非ホームページをチェックして,行ってみてください。楽しい実験コーナーもありました。夏休みの自由研究のネタを探すこともできそうです。私もまた行こうと思います。

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