輪島の隆起

災害に備えよう

気象予報士・防災士である私は、2024年8月上旬に輪島に行く機会を作り被災地の様子を調査してきました。今回の震災では多くの方が亡くなり,いまでも復興の途中でたくさんの方がご苦労をされています。そんな中でも,震災の現実を理解することは,今後の震災対応の上でも重要と考えます。そのため,輪島を訪問するにあたって,現地の方の思いや苦労を考えながらいろいろなことを見てきました。今後,数回にわたり報告します。今回は地質学的な見地から能登半島地震の特徴である隆起の様子を見てみましょう。

輪島港付近

まずは輪島港付近の様子を紹介します。竜ケ埼灯台の麓にある弁天社と金毘羅社のあたりから海の様子を撮影した写真(撮影2024年8月9日)を示します。1枚目は鴨ヶ浦方向を撮影したものです。岩の色を見ると,地震の前に水面下にあった岩は白っぽく,水面上にあった岩は黄色っぽく見えています。その境が地震前の水面高さと考えられ,かなり隆起していることがわかります。

輪島の隆起の様子,鴨ヶ浦方面

下の写真は輪島港第4防波堤灯台のある防波堤です。水面下にあった防波堤は色が白く,はっきりと隆起したことがわかります。

輪島の隆起の様子,輪島港第4防波堤

下の写真は鴨ヶ浦と反対方向を撮影したものです。どのくらいの領域が隆起により見えているのかイメージしやすくするため水面下だったと思われる領域に赤く色を付けました。水面下だったところは白っぽく見えていることを利用しました。カラー写真をグレースケールに変換し,輝度の閾値を決めて閾値以上のところを赤くしてあります(使用ソフト:ImageJ)。これにより,どのくらい見えている岩場の面積が増えたのかイメージしてもらえると思います。岩場の面積は2倍以上になっているように見えます。

輪島の隆起の様子

曽々木海岸

輪島市の中心部から東へ15kmほど行ったところに風光明媚な曽々木海岸があります。そこの様子を見てみましょう。写真は2024年8月10日に撮影しました。まずは曽々木のシンボル「窓岩」を見ます。リンク先の記事にもありますが,窓岩の上部の岩が崩れて窓がなくなってしまった様子が見えます。
参考)奥能登の奇岩「窓岩」,変わり果てた姿に
https://www.asahi.com/articles/ASS1X4Q47S1XPQIP002.html

隆起の状態は,写真の下の方を見てください。水面下だったところの岩は白いので,地震前の水面位置がわかります。近くに行って測定しなかったので隆起量はわかりませんが,新聞によればこの付近で2mくらいは隆起しているようです。
参考文献)https://www.tokyo-np.co.jp/article/307296

曽々木海岸,窓岩の崩落と隆起の様子と

窓岩と反対側にある大川浜・白岬方向を見ましょう。岩場は水面下だったところは白いので水面位置がわかります。また,砂浜に構造物がありますが,Googleのストリートビューで見ると,水面はこの構造物のあたりにあり,そこと岩場を結ぶと地震前の海岸線が推測できます。これにより,砂浜の面積がかなり広くなり,海岸線が沖の方に移動していることを確認できます。

曽々木海岸の砂浜の隆起の様子

隆起を利用した仮設道路

輪島の中心部から曽々木海岸を結ぶ国道249号線は山のふもとの海岸線に作られた道路ですが,今回の地震により山の斜面が崩落し,道路が壊滅的なダメージを受けました。いまでも不通区間が残っていますが,一部のところでは下の写真に示すような仮設道路が設けられています。

以前の道路は防波堤の上にありました。山の斜面が崩落し,防波堤もろとも海側に押し出されています。道路だったところは跡形もなく,道路を覆っていたアスファルトがバラバラになって土砂の上に散乱しているのが見えます。道路がもともとあったところに道路を作ることは簡単ではありませんでした。そこで,海岸が隆起したことを逆手にとって,防波堤の下に仮設の道路が設けられました。仮設道路の海側は土のうが防波堤代わりに設置されています。隆起したことで海岸線が沖の方に移動したのでこのようなことが可能になりました。山側にも土のうが設けられていますが,これは山側の土砂が動いた時に防御するためのものです。なかなか賢い対応だったと思います。

まとめ

今回は海岸での隆起の様子を見ていただきました。ニュースを通して知ってはいましたが,実際に隆起した様子を見たとき,自然の力のすごさを感じました。また,海岸線には風光明媚なところが多くありますが,至る所で地震の影響を受けており,早期の復興を願わずにはいられませんでした。今後も輪島関連の記事をアップしていく予定です。

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