ブルーインパルスのような飛行機は普通の旅客機とちがって頑丈にできていたり,主翼の形状が異なったりするため,急旋回など旅客機では考えられないような動きができます。そのため,普段見られないような飛行機雲を見ることができます。それらの雲は飛行機の周りの空気が減圧された少しの間だけ見えて,なくなってしまうような儚いものです。さあ,それらを見ていきましょう。
翼端渦
主翼の端から伸びる翼端渦を見ましょう。翼の下面は圧力が高く,上面は圧力が低くなっており,その圧力差で飛行機は揚力を得て飛んでいます。そのため,翼の端っこは圧力の高いところと低いところが隣接して存在することになり,その圧力差により渦が発生します。これが翼端渦です。戦闘機が急上昇や円弧を描く動きをするとき,翼の下面と上面の圧力差が大きくなるので,より強い翼端渦が形成されて雲が発生します。
翼端渦の発生するのは主翼に限ったものではなく,尾翼で発生することもあります。
旅客機ではできるだけ翼端渦を抑えるような構造にしています。それは,翼端渦の発生は旅客機が前に進む抵抗となり,燃費の悪化につながるからです。また,旅客機では戦闘機のような急旋回もできませんので,翼端渦の雲を見る機会はなかなかありません。航空祭ならではの楽しみです。
主翼上面にできる飛行機雲
つぎは主翼の上にできる飛行機雲です。下の写真も飛行機が急上昇などの円弧状の運動をしたときのものです。機体下側の空気が主翼の前縁から上面に吹き抜けるのですが,そのときに減圧されて飛行機雲が出ています。
また,機体の一番後ろにはエンジンの排気口が見えています。燃えているように見えるのですが,実際に燃料を燃やしているところが見えています。これはアフターバーナ―といって,エンジンの効率は悪いのですがパワーを大きくする方法です。エンジンの排気にもう一度燃料を吹き付けて燃やし,排気口から吹き出す排気の勢いをアップします。
これは主翼の上の部分と翼端に同時に飛行機雲が出たものです。
最後に,主翼上面全体が減圧してできた飛行機雲で覆われたものを示します。これも,エンジンの排気口から炎が噴き出しており,アフターバーナ―を使って飛んでいることがわかります。この雲をコックピットから見たらどんなふうに見えるのでしょうね。是非,見てみたいものです。
飛行機雲を楽しむために
翼端渦の雲はとても分かりやすく,誰でも簡単に見ることができます。ただ,主翼周りの雲は拡大しないとなかなかわかりにくいので,ズーム機能のあるカメラがあるといいですね。
また,航空祭当日の天候はいろいろなので,それに合った楽しみ方をするとよいと思います。青空が広がれば,清々しい中で見ることができますし,曇りであれば湿度が高めなので飛行機雲が出やすく,それを楽しむことができます。航空祭に行ったら雲をめでるという方が増えることを願っています。