前のブログ記事で「積乱雲の減衰期には冷たい空気が積乱雲の周りに吹出す」ということをお話ししました。これは「冷気外出流」と呼ばれますが,この冷気外出流の先端ではもともとあった周囲の空気と衝突し突風が吹きます。この衝突線を「ガストフロント」と呼んでいます。ファミレスの「ガスト(GUSTO)」はスペイン語で「おいしい」という意味だそうですが,ここの「ガスト(GUST)」は英語で「突風」という意味です。
ガストフロントのところでは周囲の空気が押されて上昇流となり,ここで雲が発生することがあります。雲はガストフロントに沿ってできるので「円弧状」となり,「アーク雲」と呼ばれています。積乱雲の観察をしていたときにアーク雲の写真が撮れました。今回はそれを紹介します。
アーク雲
アーク雲を観測したのは2020年8月22日 17時頃です。下の写真の左の方に雨柱が写っており,その上空に積乱雲があります。雨柱側に中心を持った円弧状の雲「アーク雲」が広がっていることがわかります。
下のグラフはアーク雲が見られた日の同じ時刻頃の近くのアメダスデータです。最大瞬間風速が一時的に大きくなり,その前後で気温が4℃ほど低下し,風向が逆転していることがわかります。積乱雲の冷気外出流がアーク雲が見られたのと同じころに通過していることが確認できました。
アーク雲の時間変化
アーク雲はタイプラプス動画で撮影していました。その中から,時間を追って特徴的な画像を抜き出して見てみましょう。下の8枚の写真は①~⑧の順番で時間が経過しています。①でみられる円弧状の雲は円弧の外側に向かって移動しています。③の写真を見ると,アーク雲の外側にはほとんど雲がないのに対し,内側には乱れた雲があることがわかります。⑥の写真では,乱れた雲の内側に雲のない領域ができてきて,⑦・⑧で雲のない領域が広がっていきます。
まとめ
積乱雲からの冷気流出流に伴うアーク雲の動きを見ていただきました。今回はタイムラプス動画を撮影していたので自信を持って,その現象をとらえていると言えます。しかし,静止画を撮っていただけでは現象をそこまで理解できなかったと思います。今回はラッキーでした。機会があれば,いつかタイムラプス動画も見ていただけるようにしたいと思います。