愛・地球博記念公園近くでリニモに乗っていると名古屋駅のビル群がきれいに見えるところがあります。しかし,そのビル群の向こう側に少し変わった山があることに気付く方はそれほど多くないと思います。その山腹はきれいに削り取られ,もう少し削ると山の頂上まで達してしまいそうです。これは鈴鹿山脈の藤原岳で,削られているのは石灰岩を採掘するためです。今回は石灰岩から地震への備えを考えましょう。
地震への備えをするためには
地震の備えに対する考え方はいろいろあるとは思いますが,私は「地震が起こる列島に住んでいるということを心から受け入れる」ことが大事だと考えます。心から受け入れるためには,身近なことから日本列島のことをよく理解するのが近道と思います。その身近なことが石灰岩です。
身近な石灰岩
石灰岩はセメントの原料などに用いられてとても身近なものですが,日本における自給率は100%です。工業原料で自給率100%というのはまれな存在です。なぜ,石灰岩がそんなにあるかということを見ていきましょう。
まず,石灰岩の鉱山がどこにあるか知っていますか? 東海地方に住んでいれば.石灰岩でできた山を目にする機会が多いと思います。例えば,最初に紹介した鈴鹿山脈の藤原岳があります。頂上は下の写真のような感じです(2016年4月29日撮影)。

頂上の周りの見渡すと,石灰岩がゴロゴロ散らばり,石灰岩でできた山であることを感じさせてくれます。

つぎは伊吹山です。下の写真は伊吹山の南側から撮影したもので伊吹山の西側に石灰石を採掘する鉱山が見えています(2014年6月1日撮影)。伊吹山は濃尾平野のいたるところから見ることができます。伊吹山と養老山地の間は山が切れており,山を同定するのも容易です。

伊吹山に登って彦根方面を撮影したものが下の写真です。写真の右上の方にはうっすらと琵琶湖が写っています。山肌の方に目を移してみましょう。白い石が散らばっているのがわかります。これらは石灰岩です。

豊橋には石巻山に石灰岩があり,長楽鉱山という石灰石鉱山もあります。また,田原の方にも石灰岩があり,以前は石灰石が採掘されていました(田原鉱山)。
参考)https://shizuoka.repo.nii.ac.jp/record/10005/files/92-0037.pdf
https://chusai.jp/factory/chusainagaramine/
https://nagoyadaiti.com/wp-content/uploads/2024/05/%E3%81%AA%E3%81%94%E3%82%84%E3%81%AE%E5%A4%A7%E5%9C%B0%E3%82%92%E5%AD%A6%E3%81%B6%E4%BC%9A%E4%BC%9A%E5%A0%B1no.45%E3%80%8020240515.pdf
以上のように,住んでいるところの周りには至る所に石灰岩があります。なぜ,そんなに石灰岩があるのでしょうか?
石灰岩ができるわけ
石灰岩ができる理由には地震を引き起こす海洋プレートと深い関係があります。地球の中にはマントルがありますが,海ではマントルが冷やされて海洋プレートを形成しています。海洋プレート(玄武岩)は動いていて大陸プレート(花崗岩)の下に潜り込みます。日本列島は大陸プレート(ユーラシアプレート,北米プレート)の上に乗っており,そこに海洋プレート(太平洋プレート,フィリピン海プレート)が潜り込みます。
海洋プレートには海の中を移動してくる間にいろいろなものが溜まります。例えば,ハワイみたいな島があればその周りにサンゴ礁ができますし,殻が炭酸カルシウムでできた有孔虫が住んでいます。サンゴ礁のかけらや有孔虫の殻が海底にたまります。下の写真は喜界島の海岸の砂ですが,サンゴ礁のかけらや有孔虫の殻でできていることがわかります。これらは石灰岩のもとになります。
大陸プレートに潜り込むときにこれらがこそげ落とされ大陸プレートの端っこにたまります。これは「付加体」と呼ばれています。そこに石灰岩ができます。


石灰岩のできる理由は地震と同じ海洋プレートの潜り込み
海洋プレートが大陸プレートの下に潜り込むのは地震の原因となりますが,これが石灰岩を作るもとにもなります。すなわち,石灰岩があるところに住んでいるということは,地震と切っても切れない関係にあるところに住んでいるということになります。これを理解すれば,地震があることを受け入れて,その備えをしようと考えられるように思います。
まとめ
日本列島で地震が起こるのは地球の構造上仕方のないことで,石灰岩からもそれを理解することができました。これが理解できれば,備えるだけです。さあ,すぐに行動しましょう。