これまで飛行機雲の「Crowの不安定性」について何度か紹介してきました。
翼端渦と飛行機雲 | ふわっとサイエンス
青い飛行機雲彩雲とCrowの不安定性 | ふわっとサイエンス
Crowの不安定性は翼端渦でできた2本の渦管が相互作用することで起こる現象で,飛行機雲のいろいろなふるまいを引き起こします。私はとても重要なものだと感じていますが,日本では認知度が低いと思っています。その証拠に,日本語のウィキペディアで「クロウの不安定性」を検索しても出てきません(2024年12月26日現在)。それに対し,英語で「Crow Instability」と検索すると「Crow instability – Wikipedia」が出てきます。そこには飛行機雲との関係がしっかりと記載されています。
ということで,Crowの不安定性の面白さを感じていただきたいので,いろいろな例を紹介します。
ふわふわをまとった飛行機雲
下の写真(2024年7月23日17時44分撮影)には2本の渦管が写っていますが,白いふわふわをまとった部分と,まとっていない部分があることがわかります。

この状態の少し前に撮影した出来立ての飛行機雲が下の写真です(2024年7月23日17時42分撮影)。エンジンが4機ある(4発)飛行機から飛行機雲が伸びています。ここで注目するのは,写真の右下部分に写っている飛行機雲です。2本の飛行機雲の間に白い雲が挟まっています。この部分の空気の湿度が高いようです。そのため,飛行機雲の筋も白色が濃くなっています。このように空の湿度分布があるところに飛行機雲ができると,雲の濃いところと薄いところができ,雲の濃いところに上の写真に示したような白いふわふわをまとったものができたと考えられます。

小さな波(リップル)を含む飛行機雲
下の写真(2024年4月7日撮影)は,パッと見たところ普通のCrowの不安定性の飛行機雲のように見えます。しかし,写真の中央付近をよく見ると飛行機雲の線がギザギザしています。

ギザギザをよくわかるようにするため写真の中央付近を拡大しました。周期的なきれいな波ができています。電気を習っている方なんかだと,インバータのリップル電流を思い出されるかもしれません。渦管になぜこのような小さな波が発生するのか? なぞは深まるばかりです。

太さに分布や節のようなもののある飛行機雲
最後は渦管に太さの分布や竹の節のように白く出っ張ったところのある飛行機雲です。翼端渦の初期の状態は左右対称であったはずなのに,2本の渦管に伴う飛行機雲は対象とはなっていません。場所によって太さや形状が異なります。また,ところどころ節のようなものを伴っていますが,なぜこのようなものができるかもわかりません。Crowの不安定性の飛行機雲には,このようなものを伴わないことも多いです。この違いがどこにあるのか不思議でなりません。



まとめ
Crowの不安性について,いろいろな飛行機雲を紹介しました。「こんなのがありました」という紹介ばかりで,なぜそのように見えるのかを説明できないのが残念でなりません。渦管の話なのでシミュレーションベースで考える必要があります。この分野が得意な方に是非取り組んでいただき,なぞを解明いただけると嬉しいです。