災害用に水の備蓄をされている方も多いかと思います。しかし,備蓄用の水には賞味期限があり,定期的に買い替える必要があります。今回はそんな「賞味期限」について正しく理解し,賢く備蓄をする方法を考えましょう。
賞味期限を超過した水のペットボトル
水の備蓄をしているとつい賞味期限を忘れてしまい,期限が切れてからかなり時間の経ったものを発見することがあります。最初に示した写真はその例です。写真に示した3本のペットボトルの賞味期限を見てみましょう(下の写真)。一番古いもので撮影時点から11年前のものになります。これらのペットボトルは中の水の量が減ってしまったせいで,潰れたり変形したりしています。

下に示す別のペットボトルでどのくらい水が減っているのか調べました。このペットボトル「天然水」の賞味期限は製造から24か月で,キャップ部分に賞味期限(2015年02月15日)が印字されています。
参考)天然水の賞味期限 https://products.suntory.co.jp/d/4901777018686/
このペットボトルの水は賞味期限から9年10か月が経過しています。製造から賞味期限が24か月なので,その約5倍になります。水の減少量を測りましたが,減少する前のものがありませんので,仮に水2Lで最初は2㎏だったと考えます。また,はかりの分解能も0.05㎏なので,その程度の精度だと理解ください。

測定結果を下の写真に示します。ペットボトルの重さは1.8㎏で,ざっと0.2㎏くらい減っていることがわかります。

ペットボトルの材質はPET(Polyethyleneterephthalate)樹脂です。見た目にはボトルの材料に隙間はありませんが水の分子が通り抜けられる程度の隙間があるので,長い時間が経てば人間でもわかるくらいに中の水が減ってしまいます。
水のペットボトルの賞味期限
ここで水のペットボトルの賞味期限について考えましょう。これまで,ペットボトルの中の水は時間が経てば外へ逃げていき,ペットボトルに入っている水の量が減少することを確認しました。インターネットで「水のペットボトル and 賞味期限」で検索すると,「水の賞味期限は表示されている容量が確保できる期限」という記述がたくさん出てきます。時間が経つとペットボトルの中の水の量が減るので,記載されている分量以上をキープできる期間だというのです。
私もこの話をしばらく信じていたのですが,それなら初期の分量を多めにすれば賞味期限が10年や20年のものを簡単に作れるのではないか? 他製品との差別化も簡単にできるのにどうしてそのようなものが出てこないのか? 不思議でなりませんでした。そこで,詳しく調べた結果,「表示された分量が確保できる期限」が賞味期限というのは都市伝説のたぐいであるということがわかりました。

本当の水のペットボトルの賞味期限
行政機関に水の賞味期限の問合せがあるみたいで,下記のサイトに行政の見解が記載されています。わかりやすいのは富士市ホームページに記載の「ペットボトル水の賞味期限に関する誤解への注意喚起」です。https://www.city.fuji.shizuoka.jp/sangyo/c0403/hngtkl0000006jyy.html
そこのリンクに下記のものがあり,その抜粋を下のビラに記載します。
https://www.meti.go.jp/policy/economy/hyojun/techno_infra/00_download/202408-2_bottled_water.pdf

内容量の減少と賞味期限は関係ないことがわかります。
水のペットボトルの賞味期限管理
水の「賞味期限」を過ぎても、必ずしもすぐに飲めなくなるわけではありません。見た目や臭いなど、自分の五感で判断し,自己責任で対応することになります。対応としては,
- 賞味期限以内に消費する仕組みを作ることで,賞味期限を超えるものを出さないようにする
- 賞味期限を超えるものを出すことを是とし,期限を超えたものを有効活用する仕組みを作る
賞味期限以内に消費するには,いわゆる「ローリングストック」があります。古いものを使用しつつ,使った分だけ新しいものを購入するものです。ペットボトルを定期的に使う習慣のある方,目に見える場所にストックする場所(頻繁にストック量を確認できる)を確保できる方には適していると思います。
私の場合,ペットボトルの水を使う習慣がない,水の備蓄は2階の押し入れで行っており,頻繁な在庫確認や物の出し入れがしにくい,などの理由でローリングストックには不向きでした。そのため,1年に1回賞味期限切れの分だけ新しく購入し,賞味期限を超えたものを有効活用するようにしています。有効活用の方法としては,
- 生活用水(トイレ,手洗い,洗顔など)用として,災害用に引き続き備蓄する
この場合,保管スペースが必要となります。私は飲料とは別の場所(少し不衛生ですが物置など)に置くようにしてスペースを捻出しています - 草木を育てている方,夏の散水用の水として使用する
- 賞味期限切れからそれほど時間が経っていないものについては,自己責任で飲用に使用する
などいろいろ考えられます。ご自分で工夫し続けられる方法を見つけられるとよいかと思います。
まとめ
ペットボトルの水について考えました。ペットボトルの賞味期限に都市伝説のようなものがあるというのにびっくりしました。ネット情報には不正確なものもあるので,自分でしっかり調べたり考えたりすることが必要だということをあらためて感じました。また,災害に備える活動を続けるには,自分にあったやり方を見つけることも大事なので,いろいろ試したり考えたりすることの大切も再認識しました。今回のブログが皆さんの参考になればうれしいです。