2025年11月29日,大塚海浜緑地「ラグーナビーチ」で「花火甲子園」がありました。三河湾の海岸から花火が見られましたので,遠くからではありますが観覧させていただきました。甲子園というだけあり,個性的な花火がたくさんありました。今回は,そんな花火を見ながら考えました。

花火でなく煙を見る
この日は大変穏やかで,冬が近いというのに風はほとんどありませんでした。そのため,花火を見ていても寒くはなく絶好の観覧日和でした。ここで,一般の方は光る花火に目が行くと思います。しかし,私は煙の行方に目が行きます。煙は空気の流れを可視化してくれる強力なツールで,条件がそろうとその流れを私たちに教えてくれます。
下の写真をご覧ください。地表面付近で煙が「フ」の左右を反対にしたようになっているのが見えます。これを見つけて,花火の周りの流れがわかると思いより詳しく観察しました。

煙でわかる空気の流れ
逆「フ」の字の煙の時間変化を見ます。赤い花火の写真は白い花火の3分16秒後のものです。「フ」の字の頂点は写真の左方向に移動しており,地上付近の風は右から左に吹いていることがわかります。逆に「フ」の字の上の辺は右に伸び,上空では風が左から右に向かって流れています。

花火の爆発している高さの煙も見てみましょう(白い花火の画像を処理して煙をわかりやすくしてあります)。ここには花火1発ごとに発生した煙が塊となって右方向に移動しています。このことから,この高さでも空気は左から右に流れていることがわかります。

以上のことから,地上付近とその上層とは空気の流れる方向が逆になっているといえます。おそらく,地上付近に温度の低い空気の層が存在し,別々の動きをしているものと考えられます。地上付近の空気と上層の空気の境目の高さは,写真の左の方に写っている山の高さ(97m)の半分程度なので,50mくらいです。
逆転層
今回のように冷たい空気が地表付近にあると,そこに「逆転層」があります。私たちの暮らしているところにある空気は,一般的に高いところほど温度が低くなります。しかし,高さが高くなるほど温度が高くなる層ができることもあり,これを「逆転層」といいます。空気は暖かいと上昇しますが,逆転層では上ほど暖かいので空気の上昇が妨げられて,そこで空気の層の境目を作ります。今回の花火では,煙によってその逆転層が可視化されました。
逆転層は風の弱い朝にも見られることがあります。夜の間に放射冷却で地表付近に冷たい空気が溜まり逆転層が形成されます。下の写真は,煙で逆転層が可視化されたものです。逆転層で煙の上昇が抑えられ,横に広がっています。

まとめ
花火の煙から空気の流れを観察しました。ブルーインパルスを見に行った時も,曲芸飛行する航空機ではなくそこから出された煙を見ていました。多くの人が着目するメインのモノではなく,そこから出たサブのモノに目をやると楽しみ方が広がって面白いかと思います。是非,いろいろな視点で楽しんでみてください。
