蜃気楼界隈で語られることとして,「下位蜃気楼は頻繁にみられるのに対し,上位蜃気楼はめったに見られない」というものがあります。本当にそうでしょうか? 確かに地上付近で上位蜃気楼が現れる条件ができるのはまれで,場所も限定されるかもしれません。しかし,大気の上の方まで考えると逆転層というのは頻繁に発生しています。その逆転層で現れる上位蜃気楼を観測できれば,「上位蜃気楼はめったに見られない」ということはないと考えます。太陽を使って上位蜃気楼を容易に観察できるのではないかと考えトライしたので報告します。
大気層の境界探し
まずは日の出を動画で撮影しました(2026年2月2日撮影,場所:蒲郡市西浦町の海岸)。撮影していたときは特徴のない普通の日の出に見えました。
その動画から大気層の境界(逆転層の上端部)を探します。大気層の境界付近では温度勾配がほかのところと比べて大きくなっており,太陽の輪郭が歪んでいると考えられます。そこで,以下の手順で解析を行いました。
- 動画から一定間隔(例えば1秒間隔)でフレームを取り出し静止画のファイルを作成
Pythonで簡単に処理するプログラムが作成できます。私はChatGPTに作ってもらいました。 - 静止画から必要なものを選び太陽の輪郭を抽出
画像解析ソフト「ImageJ」でできます - 解析結果を背景色が透明なGIFファイルにしパワーポイントで重ね合わせ
個人でやっているので手持ちのソフトを総動員します
下の写真は輪郭を抽出した最初の時刻の写真です。手前の海は三河湾で豊橋あたりから日が昇っています。

ここから30秒間隔で太陽の輪郭を抽出した結果を示します。輪郭が途中で曲がっているところを探しました。どうやら破線のあたりに大気層の境界がありそうです。

そこで,大気層の境界がありそうなところに注目し動画を見直しました。太陽の下部が注目した場所を横切る前後のフレームを抽出して並べたのが下の写真です。図の破線を横切るタイミングで太陽下端部の形状が変化しており,間違いなく大気層の境界があります。

太陽黒点
大気層の境界があることがわかりましたが,「これが上位蜃気楼だ!」といえる画像を得るために黒点に着目しました。やはり目標物が伸びたり変形したりしないと上位蜃気楼の感じが出ません。この日の太陽黒点の様子を見てみましょう。
引用元)現況・トレンド | 太陽黒点 | 宇宙天気予報
3つの黒点が1列に並んでおり蜃気楼で変形したときの様子がわかりやすそうです。これらの黒点が大気層の境界を横切るところを観察します。なお,私が撮影した太陽の向きは引用した写真を左回りで約90度回転させたレイアウトになっています。

大気層を横切る10秒間について,2秒間隔で写真を示します。なお,この日の太陽光は大気を通る間に弱められていたので撮影においてフィルタは使っておらず,コンパクトカメラ(メーカ:Canon 機種:SX740HS,光学40倍,三脚固定)で撮影しました。
最初,黒点が3つ並んで見えます。しかし,4秒後には上側と下側の黒点がU字状に伸び,真ん中の黒点とつながっています。6秒後には3つの点に戻りましたが,真ん中と下の点はもやっとしています。また,2秒と10秒で3つの並ぶ傾きを比較すると,10秒の方が傾きが寝ていることがわかります。


まとめ
今回は大気層の境界を探して太陽黒点が上位蜃気楼で変形する様子を観察しました。朝日や夕日を動画で撮影し解析すれば,結構簡単に見つかるものと考えます。皆さんも是非トライしてみてください。
