蜃気楼を見つけるため,三河湾をはさんで対岸を頻繁に観察しています。そのときふと思いました。
「見えている景色に地球の丸みがどの程度影響しているのか?」
そこで,今回は三河湾の対岸の見え方を考えました。さらに,普段生活している中で地球の丸さをどんなところで感じているかも見てみましょう。
三河湾の対岸はどのように見えているのか?
地球はほぼ球体なので,表面が上に凸に湾曲しています。そのため,下図の示すように目の位置から地球に対し接線を引いたとき,接する点より向こう側では地球が邪魔で表面が見えなくなるところがあります。地球を球と仮定すれば,その距離x0を簡単に計算することができます。見ている目の地面からの高さをhとし,距離x0を計算した結果を下に示します。高さhが大きいほど遠くまで見えます。人の目の高さは1.5m程度なので,数km先にその点があることがわかります。このくらいの距離なら三河湾で実験できますので,実際に目の高さを変えて景色を観察しました。

さらに,遠くに見えている地面は自分の水平方向から沈み込むこともわかります。この関係も下に示す式で計算できます。三河湾の大きさ程度だとこのことはなかなか感じられません。自分の水平方向の基準が簡単にはつかめないからです。これについては,あとで蒲郡から富士山を見たときの例を使って説明します。

蒲郡から三河湾をはさんで対岸を撮影しました。目の高さは海面から0.1m~7mと変化させました。見ているところからの距離の違いを明確にするため,観察対象は仏島(距離4.5km)と三河港コンテナターミナル付近(13km)としました。また,仏島付近を拡大した写真も掲載したのであわせてご覧ください。
海面から0.1mと2mの写真を比較します。0.1mでは仏島の下部か沈んでいるために見えず,仏島の向こうに見える岸壁の高さも低くなっています。仏島の下部が見えないことから,地球により向こうが見えなくなる点は仏島の手前にあることがわかります。
海面から2~7mの写真を比較します。4~7mでは,仏島と向こう側の岸壁の間に海面が見え,目の高さhが高いほど海面の幅が広くなります。仏島の形は2m以上ではほとんど変化していません。



目の高さhと向こう側が見えなくなる点までの距離x0の関係を下の図に示します。仏島の距離だと目の高さ1.6mでx0となります。高さ0.1mで沈み込んでいた仏島が,2m以上で形が変化しなくなったことと整合がとれています。コンテナターミナルの距離だと,目の高さhが13m必要なので今回観察した範囲(~7m)では,岸壁が海面と交わるところは地球で隠れていたと考えられます。

以上のように,三河湾ぐらいの大きさでも見る人の目の高さによって見え方が変化することがわかりました。蜃気楼を探すときは目の高さによる見え方の違いも頭に入れておいた方がよさそうです。
いろいろな丸みの感じ方
つぎに,普段生活している中でどんなところで地球の丸みを感じることができるか考えます。感じる場面はいろいろあると思いますが,今回は下表に示す4つのパターンについて示します。

ひとつめは蒲郡から見た富士山です。下の写真は蒲郡の西浦半島から撮影したものです。三河湾をはさんでラグーナ蒲郡の観覧車も見えます。撮影地点から富士山までの距離は154kmですが,手前に写っている山と比べてかなり低く感じませんか? その原因は地球の丸さにより富士山が沈み込んでいるからです。その沈み込みの影響を見ましょう

地球が平面と仮定したとき,富士山はこの写真の中でどのくらいの高さで見えるのでしょうか? 写真ではラグーナ蒲郡の後ろに標高89mの山が写っています。この山の高さを利用して求めてみましょう。そのために,三角形の相似則を使います。この山までの距離を地図で調べたら12kmでした。富士山の位置(ここからの距離154km)にこの山を投影すると高さが1142mになります。1142mの山が富士山の位置にあると,いま見えている標高89mの山と同じ高さに見えます。富士山の高さは3776mなので,写真上で見える高さは89mの山(写真中で線分長さ4.6cm)の3.3倍(=3776/1142)になります(下図の赤矢印と破線で示した位置)。見えている富士山の倍くらいの高さです。
見えている富士山はどのくらいの高さに相当するか考えます。1142mの山が写真中の線分長さ4.6cmに相当するので,比例式を使って計算すると1961m相当となります。
ゆえに,富士山の沈み込み量は1815m(=3776-1961)です。沈み込み量を最初の方で示した計算式を使って求めると1826mなので,こんな簡単なやり方でもそこそこあう結果が得られました。

ふたつめは高いところの日の出は早いことを示します。下の写真は富士山御殿場ルートを登った時に富士山頂方向を撮影したものです。この日の日の出時刻は頂上で4時54分頃,撮影地点(標高1500m付近)では4時58分頃でした。頂上から太陽が当たっています。右側の写真は頂上の日の出から10分ほどたっており,影になっている部分は雲によるものです。

三つめは地球影です。地球影は日の出や日の入りの頃,太陽と反対側にできる地球の影が大気に写って見えるものです。山に登った時に撮影した写真にきれいに写っていたので紹介します。なお,山でなければ撮影できないということはありません。太陽と反対側の視界が開けていれば見えます。
下の写真は穂高岳山荘のところから見たご来光です。雲海からきれいな朝日が出ました。

太陽と反対側(西側)の空を撮影したのが下の写真です。雲海と橙色の空の間に暗い帯があります。これが地球影です。日が昇るにしたがい地球影の幅は狭くなり,やがてなくなります。

月に映った地球の影を見てみましょう。下の写真は2025年9月に観測した月食の写真を並べたものです。月は地球の影の中を移動していきます。このように月を並べてみると地球の影が円であることがイメージできます。また,影の中心付近が暗く,外周側が明るいこともわかります。

まとめ
地球の丸みで景色がどのように違って見えるか三河湾の景色を例に考えました。さらに,日常の中で地球の丸みをどんな時に感じるかも見てみました。ネットを検索するといろいろな例が出てきますが,自分の体験として感じることができるとよいと思います。この記事を参考にして探してみてください。
